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November 21, 2017

ブレードランナー2049

物語上の30年という月日は、ハリソン・フォードの実年齢に程よくマッチし(制作年度では35年)、いい意味で、前作の続編として成り立っている。本作はいわゆる「2」ではない。『ブレードランナー』の後日談というべきだろう。デッカードとレイチェルのその後は当時でも話題になったわけで、一応これで一つの物語が完結したと言っていいと思う。(ネタバレ)

Bladerunner2049

物語は、反抗の恐れのある旧型レプリカント(ネクサス8型)の‘’解任’に当たっていた新型レプリカントの捜査官‘K’(ライアン・ゴズリング)が、レプリカント(レイチェル)が出産した子供の行方を追うことを命じられ、その中で自分自身の出自の疑惑に迫っていく話である。前作は人間であるデッカード(ハリソン・フォード)がレプリカントに対する感情移入によって自己喪失に陥る話だったが、本作はその逆で、レプリカントが人間かも知れないという自己猜疑に陥るのだ。この逆説を通じて、またストーリーのキーである‘レプリカントの子供’を通して、人間らしさとは何かを問いかけている。主人公がレプリカントになったがために、テーマへの距離は若干遠くなった嫌いはあるが、それでも、この作品に埋め込まれているメタファーを置換させていくことで、現代社会の大きな問題である差別や格差を考えるきっかけぐらいにはなる。
 
『ブレードランナー』は現在にも引き継がれる未来社会像のステレオタイプを作った映画だ。故に本作品における世界観に新たな驚きはない。それでも、‘K’の恋人がホログラフのバーチャルキャラクターで、娼婦を呼んで実体と重ね合わせてセックスするなどは、近未来のラブライフを予感させるもので興味深い。アプリを落とすシーンは、今のゲーム感覚からするとよくわかるし、落ちた瞬間の興ざめな感覚が観ている方にも突き刺さる。廃墟ホテルのステージショー(プレスリー)やジュークボックス(シナトラ?)がホログラムで構成されているのも面白かった。すぐにも実現できそうなアイディアである。ホバーカーなど現実には難しいものもありながら、近未来の世界は前作よりもさらに進化(30年分)しているように見える。ただ、『ブレードランナー』という作品が生み出した文化的なインパクトはもはやなく、オリジナルの評価を乗り越えることは決してできない続編としての宿命を背負ってしまっているのがなんとも気の毒ではある。
 
しかしながら、映画の造りはとても丁寧で、シーン一つ一つが良く考えられてできている。特に色彩に関しては明暗の使い方ともにセンスを感じる。もともとリドリー・スコットは光の出し入れが上手い監督だが、そのトンマナをドゥニ・ヴィルヌーヴが上手くなぞらえている。明暗、色彩、サウンドとも彼が『メッセージ』で見せた感性をそのまま、今度はプラスの方向に出している。派手なドンパチはあまりなく、アクションはストーリーの必然の中でスマートに織り込まれている。そして、シーケンスに従って淡々と物語は進んでいく。クライマックスシーンすら、なんか落ち着いて観てしまっている。この共感性の欠如は、レプリカントだからこその演出なのではないだろうか。
 
主演のライアン・ゴズリングはお初である。寂しい青年捜査官を演じるには程よい顔つき体つき。役柄だからほとんど表情らしい表情もなく(強いて言えば痛がるシーンぐらいか)、淡々とタフなレプリカントを演じている。ハリソン・フォードは当時の面影もなく、さえない年寄りそのままに。怪演だったのは仇役の‘ラブ’=シルヴィア・フークスだろう。使命に忠実、非人間としてのレプリカントの冷徹さをクールに演じている。人間らしくいない死に様も見どころの一つか。
 
30年前の謎をうまく回収しつつ、テーマを再生して見せた本作は、‘昔の名前で’相撲を取る作品にありがちな期待外れなところは一切ない。道に完全に乗っている。ただそれ以上のものがあったかといわれると微妙でもある。それがいいのか悪いのかはまた別の視点の議論になろう。

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