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July 01, 2017

ハクソー・リッジ

この作品が太平洋戦争末期の沖縄を舞台にしていることはあまり大っぴらに喧伝されなかった。地元に対する配慮が働いたようなのだが、公開されて戦場となった沖縄・浦添市の前田高地に観光客が訪れるようになっているという。主人公であるデズモンド・T・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)は衛生兵として戦地に赴き、米兵はもちろん日本兵も救い出した。敵味方の垣根を超え、一人でも多くの兵士の命を助けたいという願望のまま、彼は凄惨な戦場を駆け巡るのだ。その姿に自然と涙が溢れ出してくる。(ネタバレ)

Hacksaw_ridge

映画の前半は、デズモンドの生い立ちと、志願兵として訓練を受け戦地に旅立つまでを描き、後半は一転して沖縄戦の凄惨な戦闘をリアルに描きながら、その中で決死の救命活動に奔走するデズモンドを追っている。前半はドロシー・シュッテ(テリーサ・パーマー)とのロマンスなど戦時にしてはほんわかした雰囲気で進むため、後半とのギャップの大きさに驚くとともに、否応なく観客は戦場へと放り込まれていく。まるで落とし穴に落ちたかのように、なすすべなく眼前に展開される地獄と向き合わなければならないのだ。徹底した暴力描写に圧倒されるとともに、当時の地上戦闘の現実を目の当たりにして、実際こんな無駄で非効率的なことを命がけでやっていたというばかばかしさに呆れてしまうのだった。他方、日本軍が数千人規模で万歳アタックをかけたシーンでは、観ているだけで一種の恐怖を感じてしまう。まるでゾンビ映画を見ているかのようだった。その恐怖は、その場で米兵が味わったと同じようなものだったに違いない。弾丸も乏しくなり、銃剣のみで特攻して来る日本兵を、ハエや蚊のように機銃掃射や火炎放射で薙ぎ払うが、その勢いを止めることができずに退却を余儀なくされる米軍。画面には狂気が充満している。その中で、一人武器も持たずに人命救助に駆け回るデズモンドは異質な存在ではあるが、その場にいること自体、彼もまた狂気に囚われているのだ。武器を持つことなく人殺しもせず、祖国に貢献したいという強い意志を貫いたデズモンドは英雄かもしれない。しかし、本来私たちは‘その前提がそもそも狂っている’という事実に目を向けなければならないのだ。流れ出る涙は、デズモンドの行動があまりにむなしすぎるからなのだろうか、簡単に失われる人命を哀悼する気持ちからなのか、アメリカを主語にするならデズモンドの英雄的行為、信条を貫き通した彼の強さに感動するのだろうが、オイラにとっては少なくとも「感動」ではない気がする。

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