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October 20, 2016

ハドソン川の奇跡

実にシンプルな佳作。余分なものがなさ過ぎて拍子抜けするが、それでもサレンバーガー機長(トム・ハンクス)とジェフ副操縦士(アーロン・エッカート)が公聴会に呼ばれ、不適切な判断を下したかどうかを問われるシークエンスはちょっとしたスリルもあり、エンターテイメント作品として品よく仕上がっている。それにしても、イーストウッド監督は実話モノが好きだ。(ネタバレ)

Sully

ハドソン川に航空機が不時着水したニュースはかすかに覚えている。しかし、その事故が「事件」かも知れなかったという裏側は日本には報道されなかったのではないだろうか。この作品は、40年近く民間航空機を飛ばしてきた機長の経験からくる判断をコンピューターのシミュレーションが否定し、機長が誤った判断により乗客の命を不必要に危険にさらしたという判定を下したことからくる事後騒動の顛末を描いている。果たして機長の判断は本当に正しかったんだろうか、という疑惑を晴らせるか否か。そこに大げさなスリルはないが、機長の偉業と人間性に対する共感、感情移入から、公聴会に臨む二人と同様に、見ている我々の鼓動も高鳴るのである。そして、やはりトム・ハンクスという俳優は名優なんだなと改めて思うのだ。最後にご本人と助かった乗客たちが登場するが、ご本人の雰囲気をうまく再現していたように思う。職務に実直で正しく生きようとする人。コンサルタントの逸話だって、引退を控えてどう生活していこうかと考えれば普通に出てくる話だろうし、奥さんとの会話なども含めて、英雄と祭り上げられた普通の人をリアリティをもって演じていた。

不時着水のシーンはセットのようだが、なかなか真に迫る避難シーンだった。また、着水までの飛行機の映像はCGだろう。これまたリアリティがあって、本当に事故を再現しているかのようなクオリティだった。9.11を生でテレビで見ている人にとってはちょっと怖くなる部分もあるかもしれない。それにしても、不時着水してわずかなけが人しか出さなかった機長の腕は相当なものだと思う。本編の最後にもあるように、機長以下、クルーや乗客全員の力によって成し遂げられた奇跡であるにしても、まずは最小限の機体損傷で着水できなければそれもできなかった話だ。それは奇跡ではなく機長のキャリアのなせる業なのだ。
 
イーストウッド監督にしてはテーマはあまり重くない。特に今回は死を扱うものではなかった(乗客にとって生死の問題ではあったが)。ここでの目的は、災難に際して、われ先にではなく、皆が協力し合って生き延びるということをアメリカ人でもできることを示すことにあったのだろうと推察する。警官による黒人射殺やイスラムやヒスパニックに対する人種差別など、今アメリカ国内で起きている人民を分断させるような動きにイーストウッド監督は心を痛めていたに違いない。そのことに対して、人々の心を束ねる‘正義’の‘等身大’ヒーローの登場を願い、その姿を‘サリー’・サレンバーガーに重ね合わせたのだろう。なにより、着水した飛行機から乗客乗員が全員救出されるシーンは感動的であり、すがすがしい気持ちにさせてくれる。

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