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August 13, 2016

シン・ゴジラ

庵野さんは、オリジナルゴジラとエヴァンゲリオンのセルフオマージュをごちゃ混ぜにしながら、日本が生み出した『ゴジラ』の再解釈に成功したと言える。オリジナルでは、核の犠牲者としてゴジラは悲劇的に描かれるが、本作ではゴジラは人間が生み出した種そのものを亡ぼす諸刃の剣として、より凶暴にシニカルに描かれている。ここでは、ゴジラ=核のメタファーはより明快になっているのだ。(ネタバレ)

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本作で展開される政府のドタバタや、最後の高所ポンプ車などは、まさしく3.11の福島を想起させる。無敵のゴジラがあんなアナログな作戦によって凍結させられてしまう空想物語と現実的なアイディアとのギャップに苦笑いさせられつつ、一方でこんな方法でしか止めることができない人類の脆弱な科学技術に危うさも感じる(福島の原発の上からポンプ車で海水をかけるしかなかったあの時の映像がよみがえる)。さらにゴジラを不条理な他国からの攻撃と置き換えることも可能だ。そのような非常時に際し、庵野さんがリアリティにこだわったという実際に起きたらどうなるかの精緻なシミュレーションが、この作品を単なる怪獣映画以上のものにしているは疑いようがない。事象の裏側に、こんな面倒なこと一一やっているのかという驚きもあるだろう。簡単に頭がすげ代わる国と誰かが言ってはいたが、政府が崩壊し、誰も決断できない状況に陥ってしまったとき『国』はどうなるのか、ある意味空恐ろしいシミュレーションを見せられたという思いもある。
 
ストーリー自体は直線的で、3段階のゴジラの進化に伴って3章仕立てになっている(具体的な章ではないが)。結局凍結剤を注入して動きを止めるという方法論が早い段階でわかっていて、そこに到達するプロセスの中に、色々な発見や驚きが織り込まれていく構造になっている。展開がスピーディで聞きなれない政治用語や学術用語などが頻繁に出てくるので、ディテールの理解は一見ではなかなか及ばないが、そこにこそ庵野さんのこだわりが眠っているので、本当にこの作品を味わおうとするならDVDを買ってコマ送りにするぐらい見込まないといけない(そんな暇はないのでやらないが)。ストーリーの分かりやすさを埋めるように、登場する政治家や官僚たちの人間模様が面白おかしく描かれている。こんな国難に際しても、どこか俯瞰したところ(よく言えば今より未来)がないと政治なんてできないのだなと改めて思う。そして、そのドラマこそ「シン・ゴジラ」のもう一つの見どころでもある。
 
本作の主人公的立場である内閣官房副長官・矢口蘭堂。長谷川博己がクールに熱演した。彼の周辺にはビッグネームがちょい役でもぞろぞろ出演するのだが、この惜しげもなさが東宝の本気度を感じさせる。特に巨災対のメンバーは個性的だ。リーダー格の森演じる津田寛治は相変わらず切れ気味のいい味を出している。環境省の尾藤ヒロミを演じた市川実日子は、変わり者の典型でいかにものキャラ。安田達彦の高橋一生もいい感じ。また、何気に自衛隊の面々も凄い。統合幕僚長・財前正夫に國村隼、副長に鶴見真吾、防衛大臣の余貴美子も出色の出来だった。何気に矢口の親友である泉修一を演じた松尾諭も良かった。とにかくキャストに関しては目移りするぐらい豪華でお腹いっぱいである。唯一、違和感を発したのは石原さとみだった。日系で広島(長崎?)にルーツを持つという設定はわかるにしても、あるいは流暢な英語が話せるという彼女の特技を活かしたということもいいけれど、それでもあのポジションに彼女だったかだろうか。悪く言えば、日本人が無理くり演じる外人の不自然さがリアリティのある劇空間を破壊しているのだ。やるならなぜ本物のハーフに任せなかったのだろう。その一点が疑問に残る。
 
さて、見終わってネタバレ情報をチラチラ見ながら辿り着いた結論があった。これは、映画を見終わったところでは考えが至らなかったのだが、ゴジラとは牧博士その人だったのではないかということだ。東京湾で発見された無人のクルーザーボートの所有者は牧博士だった。転落の可能性ではなく、彼自身が超進化生物になるべく海に飛び込んだのだ。ゴジラが前触れもなく突然東京湾に姿を現したことも、博士の残したメモの意味も辻褄が合う。ここがすっきり一見でわかっていたら100点満点だった。

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