« ファンタジーサッカー2016 第15節 | Main | ファンタジーサッカー2016 第15節レビュー »

June 11, 2016

レヴェナント

デカプリオにオスカーを獲らせるために作られた映画と言ってしまってもかまわないのではないかぐらいデカプリオな作品になっている。主人公のヒュー・グラスは実在した猟師らしいが(物語も置き去りにされたところは実話らしい)、当時のアメリカ北西部の暮らしぶりがあまりに未開過ぎてびっくりする。作品自体は、生命の尊厳も軽んじられた時代を背景に、人が生き抜くということの本質を問うている。エンディングで見せたデカプリオの表情(そこに喜びは一切ない)が、この作品のすべてを物語っている。(ネタバレ)

Revenant

とにかく、全編デカプリオの体を張った演技がすべてだ。極寒のロケ地で、凍てつく川に浸かり、生肉を食い、馬の腹に潜り込む。どこまで本気でやったかは正直わからない(あんな極寒の川に浸かれば確実に凍死すると思うが)。グリズリーに襲われるシーンは精巧なCGだったし、馬の死体はおそらくラバー製だな(むしろ生を使う方が動物保護の観点からしてきょうびあり得ない)と思うわけで、たとえそれらが模造品だったとしても、リアルに迫るデカプリオの演技はすべてを本物に変えてしまうのだ。息子に対する愛情も、失った悲しみも、フィッツジェラルドに対する怒り、憎しみも、そしてクマに襲われた痛みも、セリフを極力絞り込み、全身を使って表現していく。息子の仇を取るためだけに生への執念を燃やすグラスそのものだった。これを観れば演技者としてのオスカー受賞は必然だったと納得できる。
 
もう一つの見どころは自然光のみで撮られた映像だ。リアリティに徹底的にこだわった結果、それはデカプリオの演技と相まって迫力ある映像に仕上がっている。厳しい自然を視覚的に体感する感覚、臨場感が半端ない。さらに、教授が担当した音楽は、その自然の空気感を阻害せず、大きく主張もせず、むしろじんわりと映像を心にしみこませていく潤滑剤のような役目を果たしている。作品環境/舞台をCGフル活用で勝手に作ってしまう昨今の映画の中で、そのこだわりは異質と言える。しかし、その作り手側の労力はしっかり見る側にも伝わってくるのだ。その意味でも貴重な作品と言えるだろう。
 
ただ、シナリオは突っ込みどころは満載で、グラスの辿る数奇な運命はご都合主義の塊でできている。そして鑑賞後、エンタメ作品の胆である「復讐のカタルシス」が得られたかと言えば実はそんなことはなくて、ラストシーンのグラスのように空虚感に襲われてしまうのだ。本懐を遂げたのになぜこんな気持ちになるのか。グラスに感情移入できなかったからなのか。いや、そうではなくて、感情移入したからこそ虚無に襲われたのではないだろうかと思うのだ。何のために生きようとしてきたのか。息子の仇であるフィッツジェラルドを殺すことでその苦労や苦痛が報われたのか。息子のホークは救われたのか。おそらくそうじゃなかった。生死を超越し悟りを開いたか、それとも復讐の先に行きついたあまりにも軽い人間の命に絶望したか、エンディングのグラスの表情から何を読み取るかによって、この物語の意味は変わってくる。最後の最後で神(ここではキリストではない)が登場するのも、唐突な気がする(神についての伏線は、亡くなった妻の回想を交えて張ってあるのではあるが、どうリンクするのかが一見では読み取れなかった)。自然に抗うことなく共に生きる。それこそがネイティブアメリカンの信条なのだろう。そういう死生観がメッセージのキーなような気もするが、確かなことはわからない。最後の最後で放り出されたことで、この作品の言わんとするところはあやふやになってしまったが、そこをあえて深く考えようとは思わない。なぜなら、この作品はただただデカプリオの熱演を愛でていれば良いのだから。

|

« ファンタジーサッカー2016 第15節 | Main | ファンタジーサッカー2016 第15節レビュー »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/77466/63723939

Listed below are links to weblogs that reference レヴェナント:

« ファンタジーサッカー2016 第15節 | Main | ファンタジーサッカー2016 第15節レビュー »