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April 25, 2016

オデッセイ

原題は『The Martian』火星の人。火星に取り残された植物学者が地球に生還するまでを描いたオデッセイである。話的には『グラビティ』をスケールアップした感じ。『インターステラー』では悪意の科学者だったマット・デイモンが主役のマーク・ワトニーを演じているので、この3作品はイメージ的にすごく似たようなところに固まってきてしまった。SF考証的には?なところもいくつかあれど、予定調和、ご都合主義と分かっていながらも、いかに危機を乗り越えるかというカタルシスは十分得られる。また、作品の成り立ちやメッセージも結構俗っぽくて、これはこれで時代をよく表しているような気がした。(ネタバレ)

Martian

NASAの火星探査ローバー「Spirit」と「Opportunity」は今も健在で、火星の地表のデータや映像を2004年から送り続けている。10年以上分の現地データが存在している惑星だから、かなりの確度で本物の環境が再現できるわけだ。現実に火星移民を送るといったような計画も持ち上がっているなかで、火星という星の環境に対して自然と関心がわいてくる。火星を舞台とした作品はこれまで数多作られているが、HGウエルズの『宇宙戦争』のような想像上の火星はもう笑い話の世界になってしまった。‘本物の火星’を疑似体験できるというのは本作の一つの大きな価値だと思う。
 
火星に一人取り残されたワトニーがわずかな生存可能性に賭けて生きる意欲をたぎらせていく、人間の英知と科学をフル稼働させて、困難をひとつづつ解決していく過程を描くことは、すなわち無慈悲な宇宙とちっぽけな人間との対比においての人間賛歌だ。エピローグにも再提示されるこの思想は、この作品の大きなテーマでありメッセージでもある。うがった見方かも知れないが、それは、近年世界のリーダーとしてのアメリカの揺らぎに呼応した考えなのかもしれないとも思った。実際、映画の中外には中国資本の侵攻が如実に表れており、その地位が確実に脅かされているのがわかる。マーク・ワトニーのサバイバルへのチャレンジや、NASAの決定に反旗を翻し再救助に向かうと決意したアレス3のクルーたちの勇気に、フロンティアスピリットというアメリカのDNAを再度見出そうとしているかのようにも見える。一方で、途中火星の土地は法律的に誰のものだといった話が出てきたり、クライマックスの‘アイアンマンのアイディア’といい、どうにも俗っぽくできているところもある。中身的にはいろいろ詰まっている。
 
この作品を語る上で一つ大事な要素がある。それは音楽だ。ワトニーがクルーの残した私物から使えそうなものを物色する中で見つけたのが、ルイス船長(ジェシカ・チャステイン)のミュージックコレクションだった。彼女は無類のディスコミュージック好きで、音楽データはそれしかなかったため、ワトニーはルイスコレクションを聴くしかなかった。しかし、まったく彼の趣味ではないのだ。ローバーを運転しながら流れる80年代のディスコが妙にマッチしていて、最先端の宇宙技術とクラシカルなディスコが生み出すギャップが、ワトニーの苦難をちょっとだけ和らげてくれる。挿入歌として、奇しくもつい最近逝去したデイビッド・ボウイの「スターマン」も使われており、これがさらに‘火星の人’の郷愁を誘う。
 
作品の奥行きという視点では、あまり登場人物の背景などは語られず、人間ドラマとしては食い足りないかもしれない。あくまで冒険を楽しむことに集中した作りになっている。しかし、むしろそうしたからこそ素直に楽しめたのだと思う。変に人間のどろっとしたものを混ぜるより、美しい宇宙空間の映像をそのままに鑑賞する方が気持ちがいいだろう。ワトニーの奮闘を真正面から見守る方がこの場合は感情移入もしやすくなると思う。実際、地球側(NASA)のスタッフの奮闘はありつつも、全編マット・デイモンの熱演なのだ(顔つきがなんとなくデカプリオとブラピが混ざって見えたのは気のせいだろうか)。そして、シナリオと演技の受け皿となるリドリー・スコットの映像美。宇宙空間の切り取り方は実に見事。クライマックスのワトニー救出におけるワイヤーロープが宙に踊るシーンは美的に感動的でもある。直近の宇宙SFものの中では一番好きかもしれない。

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