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January 06, 2016

007スペクター

2015年スパイ映画のトリを務めるのは老舗の007シリーズの新作。歴代ボンドの中でも人気が高いダニエル・クレイグ=ボンドだが、本作が彼のボンド最終作になるという噂も囁かれている。 同じ年に異なるスパイ映画が並ぶのも珍しいが、3作それぞれに個性があって面白い。007シリーズは現代スパイアクション映画のステレオタイプ(どんな危機も乗り切って美女とイチャイチャできるカッコイイ存在)を確立した作品であり、その意味で本作もその路線を大きく逸脱するものではないのだけれど、大仕掛けな話がともするとギャグにも転嫁しかねないきわどい線を行っており、どういうスタンスで見るべきかちょっと戸惑うところがあった。前の競合2作品はほぼギャグ映画だったのに対して、そこまで突き抜けきれないところが逆にもどかしい。(ネタバレ)

007spector

この類の映画作品に求められるものはハラハラドキドキであり、奇想天外なアッという驚きであり、エロチックな美女との絡みだろう。この三点で評価するとき、007は結構アベレージ高いと思う。アクションのスケールは大きいし(CGも極力使ってないように見せている)、本作のボンドガール・スワン博士役のレア・セドゥもなかなかにいい女ぶりを演じている。ただ、普通に映画作品として見た時に、どうしてもシナリオの弱さを感じてしまうのだ。突き詰めれば、もっと早く簡単に殺れるはずなのに、なんでみんなボンドを殺さないの?という疑問に行きついてしまう。そここそが漫画的な部分の根幹なのだが、そこを埋めていないので、話の必然性が希薄でアイディアだけが先行しているように見えてしまうのだ(素手しか使わない殺し屋とかは典型。脳に針を刺す拷問器具も唐突だし)。伏線に乏しく1本線で進むストーリーは何のひねりもない。シリーズ中頻繁に登場したスペクターの親玉の正体が明かされるという、結構大ネタ回なのにもかかわらず、フランツ・オーベルハウザー(クリストフ・ヴァルツ)とボンドの関係もそれほど深く描かれるわけではないので、クライマックスでの感情移入も浅い。派手なアトラクションを手を変え品を変え延々見させられている感じだ。導入のメキシコシティにおけるヘリのシーンは映像的にもアクション的にも密度が高く、作品に対する期待感を一気に持ち上げるのだが、話が進むにつれてどんどん尻つぼみになっていってしまうのが残念で仕方がない。最後のビル爆破がフラットに見れば相当凄いことかもしれないのに、そうは見えてこない。映像として張った伏線もふーん程度で終わってしまうし、ヘリをボートで追いかけながらピストルで撃墜するなんて、ちょっと興ざめじゃなかろうか。
 
こうしてみると、結局007であっても細かいところへの突込みは厳禁という作法は適用されるのだ。そして、三作品中そこが笑いとして最も昇華されない007は一番中途半端に見えてしまう。しかし、エンタテイメントとしては古臭いながらもこれが一番オーソドックスなアプローチなのではないか。そして、ダンディーで汗臭くないカッコイイ男に憧れていた時代をそのまま引きずっている、それがまだ通用しているというのが意外と凄いことなのかもしれない。

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