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November 17, 2015

ハーモニー

興味は小説世界がどのように視覚化されるかの一点だった。読み進めるほどに観念的になっていった原作の意図がどのように解釈され映像化されるのか。結論的に行ってしまえば、非常にわかり易くなっていた分、原作そのものの深みには到達しえなかったということだ。それはやはり、巻き戻せるか否かのメディア特性に負うところが大きい。それでも、押井のような変な難解さを求めるよりはるかに良心的で、起伏の少ない静かなドラマがゆるやかに流れていくのだった。(多少のネタバレ)

Harmony未来感を強調するためなのか、CG的な画質はクリアできれいだ。設定の中で昆虫的な、あるいは海洋類的な乗り物が登場するのは『虐殺器官』の世界を引き継いでいるからなのだろう(建築物、構造物との比較においてちょっとした違和感を覚える)。こういったところからも、かなり原作に忠実に作っていることがうかがえる。だが、その努力をもってしても、この作品で一番の肝となる‘意識のない状態’が表現しきれなかったのは残念に思う。何らかの解釈あるいは視覚的な表現を期待してみたのだが、ミァハが言う‘向こう側’はここでも概念でしかなかった。社会的に管理され存在そのものを他者に委ねている状態を個の喪失ととらえるならば、ミァハの戦いは自我の奪還に他ならない。しかし、それは意思の喪失によってしか成し遂げられない。このパラドックスにこそ本作の面白さが込められているはずなのだが、一見ではなかなかそこまで辿り着かないし、それを読み取るだけの情報量も足りないように思った。テーマは重いし結末はあっけなすぎた。映画だからこそ原作の行間を埋める作業は必要だったように思う。何のための映像化なのか、ということだ。原作未読で観た人の率直な感想を聞いてみたいものだ。

あと、主人公たるトァンはみゆき姐さんじゃないなぁ。

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