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November 10, 2015

白暮のクロニクル

Photo白暮のクロニクル/ゆうきまさみ
小学館 ISBN978-4-09-185847-4

Kindleとamazonのコンビネーションはやばい。FBにあった期間限定無料版を読み始めたら、あっという間にはまってしまい、2巻目を読もうとKindleのストアを見たらiOSのサポートがなくてiPadでは購入できないことがわかり、amazonもアプリ経由だとだめなのだけれどWeb経由だとダウンロードすることができ、そういう猿に文明の利器を与えた時のごとくのめりこんでいってしまったのだ。そしてとどめのワンクリック。amazonでカートを経由することなく商品表示画面のワンクリックボタンをカチッとするだけで次が読めてしまう。カチッと押すたびに540円がタクシーメーターのようにカチッと上がるわけだが、続きを読みたいという衝動を抑えるだけの抑止力にもならない。とにかく既刊6巻まで一気に行ってしまった(危うく鉄腕バーディまで行きそうになったけれど、そこは思いとどまった)。※無料期間が過ぎたら見事に読むことができなくなって、結局1巻目も購入することに。嵌められた。

さて、肝心の物語だが、簡単に言ってしまうと、現代解釈された吸血鬼版シリアルキラーものである。近年では『屍鬼』のような作品もあるが、ここでは一種の病気のようなものとして扱われている。数百年前から存在している‘オキナガ’(息長)と呼ばれる不老長寿者で、血液を与えることによって適合者がオキナガになったり、日の光に当たると火傷になりそのままにすると炭化してしまうので日中外を出歩けないとか、たいていの傷は自己修復してしまうとか、吸血鬼ものに出てくる設定をうまく取り込んで、古来の吸血鬼伝説は現世にこう言った人間が存在していたから生まれたのではとでも言いたげな逆説的解釈をしているのである。彼らはウィルスなどに感染しても発症しないので、衛生上の問題で厚労省が管理しているとか、人間を襲ったり害をなすものではなく、ある意味社会的弱者として描かれているのだ。こういうギミックはいかにもゆうき先生らしい。

ゆうきまさみの作風は、現代日本の日常に違和感なくファンタジーを乗せることにある。肝にあるのは設定のリアリティだ。今の世の中でも、あるいはちょっと先の未来なら「あるかも」というつま先が地に着いたような感覚なのである。まったくのおとぎ話の世界なら話はどうとでもなる。それをあえて現代社会の中で回そうとするところに、ゆうきまさみ作品の面白さと、そして作者のインテリジェンスの高さを感じるのだ。実際この作品も構造が非常にち密にできている。オキナガである主人公・雪村魁とヒロイン(というにはデカすぎるがw)伏木あかりの因縁と、魁が追っている‘羊殺し’と呼ばれるシリアルキラーの謎が話の軸となって進んでいく。その道中、オキナガを取り巻く様々な人間模様や社会環境が話の奥行きを作り出し、時には深すぎて掘っていくと話が違う方に進んでいくのではなかろうかと心配するぐらいになる。そして、脇に入ったところでそれがまた本線とつながっていたりするものだから、どんだけの伏線構造になっているのだか想像もつかない。明らかに実写ドラマ化向けの作品なのだ(パトレイバーはロボットだからどうしても現実離れしてしまうが、こちらは基本的に人間なのでドラマにしても違和感がないはず。あと、オキナガの惨殺現場などはおそらく地上波では難しいだろうからやるとすれば映画だな)。吸血鬼ものにありがちな恐怖とか陰惨さみたいなものは全くない。伏木あかりのへんな真面目さとOL女子感が物語全体を軽妙にしている。結構重めの話なのにどこかで気を抜けるところがあるのもゆうき作品の良さだ。新刊が出るのが待ち遠しい。

 

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