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September 29, 2015

ナイトクローラー

人の不幸は蜜の味とはよく言ったものだが、ここまで食い物にする人生もあるのかと驚きを隠せない。原題を直訳すれば「夜這い回る者」。「crawler」には‘爬虫類のような這い回る動き’とか、スラングでは‘ごますり野郎’という意味もある。これほど作品の中身を端的にあらわした題名も最近では中々見当たらない。主人公ルイス・ブルーム(ジェイク・ギレンホール)こそゲスの極み(どこぞの芸人なんぞ足元にも及ばない)。そこで終わるのかという不安をよそに見事終わってしまったラストといい、ここ数年ではお目にかかったことのない衝撃作である。(ネタバレ。見たいと思っているなら読むべからず)

Nightcrawler鉄くずをコソ泥して糊口をしのいでいた男ルイスが、あるきっかけからニュース映像を配給するフリーランスとして成り上がっていく物語。この自分がのし上がっていくことにしか関心のない男を、気持ち悪いぐらいにリアルに演じるギレンホールの演技力こそが最大の見どころだ(特にすごいと感じたシーンは、一番に駆け付けた交通事故の現場で、犠牲者をカメラアングルが良いとこまで引きずり動かし撮影しているときの彼の表情だ。ギレンホールは‘内側にこもる熱狂’を怖いぐらいにクールに表現するのだった)。冷静に冷徹に計算するしたたかさ、相手を嵌めることに何の罪悪感も感じていない太い神経(あるいは神経がないのかもしれない)、人望も何もない人間がたたき上げて成功するならこんな輩なのかもしれない。そう思わせるリアリティがギレンホールの演技にはある。少しほほのこけた生気のない顔つきと、窪んだ眼孔にぎょろりと光る鋭い瞳。死神のようにも見える。ときに優しい表情を見せるが、それは仮面であり、その下には自分の目標を一点に見詰める野心家の無慈悲な素顔が隠れている。その陽と陰の2つの顔を見事に描き分けているのだ。

ストーリーはルイスがのし上がっていくプロセスを描いていくのだが、彼のしでかす違法行為がエスカレートするたびに見ている側のボルテージも上がっていく。物語としてみるとこれだけの悪人を描くとき、普通なら因果応報よろしく悪いことをすればそのしっぺ返しが必ずくるというような展開を想像するのだが、この作品はそうならない。そこまでえげつないことをするか!というクライマックスを迎えても、カタルシスは決して得られない。その後味の悪さを引きずりながら映画館を出なければならないのだ。これは意外と映画を見る動機を作る上で重要な情報だけに、読んでしまったらこの作品の醍醐味は半減するだろう。そこまで含めて‘やられた!’と思える映画なのだ。楽しい気分にはもちろんなれないが、それでも‘面白い’としか表現できない怪作である。

(もしかしたら続編=完結編=仕置き編があるのかもと期待してみる)

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