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January 21, 2015

Photo岳/石塚真一
小学館 ISBN-10:4091875718
スキー合宿中、お祭り広場で全18巻を読破。結構涙腺がゆるいので、お昼の混雑時にマンガ読みながら目を潤ませている変なオヤジになってしまっていたのがちょっと恥ずかしかったが、実際胸に来るエピソードがたくさん詰まっている。世界中の山を登り、今は北アルプスで遭難救助のボランティアをしている登山家・島崎三歩を主人公として、山を訪れ遭難する人々の人間模様と、救助に向かう県警や遭対協のメンバーの奮闘が様々な角度から描かれている。

まずは主人公・三歩の身体能力の高さに目を見張る。トップの登山家の身体能力は半端ない。筋力とスタミナは常人をはるかに超えている。漫画で描かれている救助事案が、どこまで現実の人間で対応できるのかは知る由もないが(人間を背負って岩壁を上り下りするとか)、現実の世界においてもクライマー(アルピニストとはちょっとニュアンスが違う)には相当の筋力、体力、スタミナが要求され、実際それを保持している人たちだけの限られた世界なのだということが分かる。普段は穏やかで豊かな自然、山も一度天候が崩れるとその表情は一変し、人間に対して鋭い牙をむく。その圧倒的なパワーに人はなすすべがない。それでも、三歩をはじめとする山岳レスキューは過酷な自然環境・状況のなかでも懸命に救助に取り組む。その姿にいちいち感動する。三歩がややヒロイックな存在に捉えられるところもあるが、その周辺の登場人物たちはいたって普通の人間であり、普通の人間として悩んだり喜んだり怒ったり悲しんだりしている。そんなありふれた日常と過酷な遭難現場とのギャップが、この物語の奥行きを作っている。オンとオフ、緊張と弛緩、その連続、うねりが、この作品を読み続けさせる原動力にもなっている。ナオタや阿久津や久美の成長も読んでいく上での楽しみとなる。

山岳遭難の中には、安易な気持ちと装備で山に入った結果引き起こしてしまうものもあり、そういう登山者は非難にさらされるのが当然だろう。たとえ死んでもそれは自己責任で仕方ないことだと思う。しかし、三歩はどんな要救助者たちにも必ず「よく頑張った」と声をかけ、生きていればそのことを最大限喜ぶのだ。物語中、三歩でも救えない遭難者はたくさん出てくる。彼も万能ではない。それでも彼は人間世界から飛び出た存在のように感じることがある。どこかポストモダン的な生き物として描かれているように思えて仕方がないのだ。久美や阿久津のような普通の人たちとの対比において、それはいっそう際立って見える。それはまたグローバルとローカルの縮図でもあるし、小さい世界で生き続ける我々自身の物語でもある。おそらく、この作品における共感のベースは久美であり阿久津なのだ。最後の最後まで人のために救助活動を続けた三歩はヒーローかもしれないが、共感、感情移入の対象にはならない。誰も三歩にはなれないし、なろうとも思わない。だからエベレストの部隊には小田君が、ストーリーテラーが必要だったわけだ。阿久津の事故(フラグ立ちまくりだった)からエベレスト行きまでは一気呵成に読ませる(この加速感は『RIDE BACK』のクライマックスあたりとも似通っているような気がした)。この作品自体いろいろな捉えかたがあるけれど、やはり読む人に対して、山岳遭難という特殊な環境を通じながら、人としての「生き方」「生命の燃やし方」を問うているのだと思う。そして、三歩の生き様は限りなく哀しく見えるのだ。

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