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December 09, 2014

インターステラー

本格的なスペースSFというより、SFという設定を活用した人間ドラマというのが本作の正しい捉え方のような気がする。高度なSF考証が入ったハードSF映画という評価もあるらしいが、それは映画のパーツパーツを突き詰めていったところに点在する話で、映画全体を通してテーマとなるのはやはり‘人間愛’なのだ。滅亡の危機に瀕する人類を救うべく、他の銀河系に移住可能な惑星を探し出すというのはありがちな話だが、そこにブラックホールと5次元世界が介在してくることでSFとしてのいかがわしさが倍増する。(ネタバレ)

Interstelear序盤は冗長。ちょっと眠くなる。娘の部屋に出る幽霊話は、クライマックスに直結させるため、どうしても細部にわたって描く必要があり、展開がモタッとしてしまう。宇宙に上がり、未知の惑星でのアドベンチャーから面白くなってくる。特にマン博士の星のシークェンスはこの作品の最大の見所だ。しかしながら、サスペンス調で盛り上がった後で、いきなり観念SFの世界に放り込まれると、そのギャップに戸惑ってしまう。タイムパラドックスを超越してしまう5次元世界からデータを伝達する手段がモールス信号というのもこれまた相当ギャップがある。5次元世界と3次元世界に壁があるとか、どうにもご都合設定でSFというにはあまりに稚拙に見えてしまう。逆説的に、だからこそシナリオ自体は良くできているのだ。いろいろな要素が複雑に絡み合いながら、きちっと整合が取れていて収まりがいい(と同時にまた嘘くさい。たとえば、大人になったマーフにブラックホールのデータをクーパーから受け取らせるために実家に一度帰らせないといけないので、どうすれば彼女が実家に戻るか考えましたというような、その逆算をあざといと感じてしまう。いやいや、そもそも5次元なのに、なんでピンポイントで実家指定なんだろう?)。

SF的成果といえば、ブラックホールのビジュアライズだったり、浦島効果を正確?に捉えていたことだとか、考証面でいくつかあるらしい(未確認)。しかし、オイラ的には登場する2体のロボットが素晴らしかった。複数の棒状のユニットで形成されたボディーは、様々な形状に変化することができ、ロボットといえば人(キャラクター)型という概念を刷新してくれた(普段は‘板’だからね。これも‘モノリス’を意識したと思われる)。ただ、正直SFとしての出来は『グラビティ』の方が上だと思う。シンプルな『グラビティ』に対して本作は詰め込みすぎな気がする(SF考証にしてもドラマストーリーにしても)。ブラックホール突入から5次元空間のシーンなどはあきらかに『2001年宇宙の旅』を意識していて、オマージュにすらなっていないところが何とも演出の貧困さを感じさせてしまう。‘5次元’と出てきてしまうと、もはやそれは観念の世界でしかない。それを3次元の視覚映像として表現することは不可能だろう。ハードSFとして評価する人たちはこの点をどう思っているのだろうか。その辺がぐちゃぐちゃになってしまっているので、結局作品の姿としては一番分かりやすい親娘ドラマに落ち着いてしまうのだと思う。

さて、話自体はあれではあるが、一方で演者に目を向けてみるとこれがなかなかに収穫があった。一番はマーフィーの子供時代を演じたマッケンジー・フォイ。彼女の唇がまたあの歳にして色っぽい。かわいさ爆発である。アメリア役のアン・ハサウェイも艶っぽかった。エドモンズが恋人だとクーパーに看破されたときの動揺、潤んだ瞳とか良かったな。厳しいミッションに挑む強さと孤独に耐える弱さ両面を上手く演じていた。そして、マット・デイモン。マン博士は悪役というより弱い人間であり、演技にはその人格の根底にある卑屈さがにじみでていた。小者にマット・デイモンを当てるとはこれまたあざとい配役だ。

総じて一般的な評価は高い。エンタメとしてありだと思う。しかし、3時間近い尺はやはり長い。純粋なSF作品とするならば親娘の話は全てねぐっていい。その方がすっきりするし、作品としてのエッジが立ってくるし、ハードSFとしての本格感も自ずと醸成されるはずだ。でもそうなると興行的には難しいだろう。だから、結果的にこれはSFファンタジー親娘ドラマで良かったんだと思う。

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