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December 27, 2014

フューリー

第二次世界大戦末期のドイツ戦線。‘FURY(憤激)’と名づけられた1台のアメリカ軍戦車の戦いを描いた本格的戦争映画。‘FURY’戦車は実在していたということだが、映画自体はフィクションで、戦争の悲惨な現実がこれでもかというまでに提示される。実話ベースの戦争映画ということで『プライベートライアン』と比較される向きも多いが、評価は賛否両論で分かれている。人の死を撒き散らすただの暴力映画か、戦争の悲惨さを痛切に訴える反戦映画か、それは見る人が決めればいいと思う。(ネタバレ)

Furyオイラ自身は、久々にキリスト教説教臭い映画に出くわしたと思った。表層的には直視できない人と人の殺し合いや死体の山を綿々と並べ続け(かなりグロ)、コリアー軍曹(ブラッド・ピット)は死にノーマン(ローガン・ラーマン)は生き残るというラストに至るのだけれど、その裏側を信仰心によって読み解いていくと中々興味深い。ノーマンがコリアーの部隊に配属されたとき、ボイド‘バイブル’(シャイア・ラブーフ)から宗派を問われ、中庸主義と答えている(字幕では中庸主義と表記されていたが、正確な意味合いが不明瞭。ニュアンスとしてあまり信仰に熱心ではないというように取ったのだが)。一方、コリアーは冷血な戦争のプロのように振舞ってはいるが、実際は戦争行為に対して恐怖や嫌悪を感じており、信心深いキリスト教徒であることが推察された。それは最後の十字路防衛戦でイザヤ書第6章のくだりではっきりする。信じる者が主に召され、信仰の薄い者が生き残るというコントラスト(しかも、あれだけ目の敵にした敵兵のお目こぼしで生きながらえたというおまけつき)。実に説教臭い。生き残った方がいいじゃないかと言われればそうなんだが、ここで問題になるのは魂が救われたかどうかなのだ。コリアーたちの行為を正当化する裏づけとしてイザヤ書のくだりがわかりやすい。主に誰が行くかと問われたとき、イザヤが私が行きますと答えた話だが、この状況においては一種の自己犠牲を肯定する意味に捉えられるだろう。「魂の救済」というテーマは、本作の全編に暗喩的に散りばめられている。死体がまったくの物のように扱われるのも、人間にとって大切な魂についてフォーカスするための演出なのだ。登場する人たちが無慈悲にあっけなく死んでしまうのも同様。隣り合わせの生と死。戦場でいつ命を落とすやも知れない緊張感の中で、心の平静を保っていられるのは支えがあるからなのだ。ノーマンが小隊の仲間たちから「マシン」とあだ名されたのは最大の皮肉だろう。機械に魂はないからだ。

表現が必要以上にグロいことを除けば、戦闘シーンはリアルな感じがして迫力がある(戦車の装甲が弾をはじくとか、戦車砲の打ち込まれた穴がぽっかり開くとかシズル感が半端ない)。特にタイガー戦車とのバトルは戦車好きにはたまらないだろう。ラストの十字路の戦闘はやりすぎなところもあるけれど、そこはハリウッド流のエンターテイメントと割り切ってナチ虐殺を(若干不謹慎ながら)楽しむしかない。コリアー小隊の面々は個性派揃いで、役者もそれぞれ役に没頭して良い味を出している。特にローガン・ラーマンは、新兵から生き残るまでをまさにノーマンとして演じ切っていた。ブラピは相変わらずブラピで良くも悪くもブレが無い。コリアーのナチSSに対する異常な憎しみの根にあるものが何だったのかは説明されなかったが、それが‘FURY’の由来になっているのだろう。

戦争というものが現実として実際としてどんなものなのかを実直に描こうとした部分は、普通の人にとって嫌悪を引き起こすだけのものでしかないと思う。けれど、それはそれで意味のあることだ。戦争を起こすのは前線には決して行くことの無い階層であり(占領に成功した町で軍や町の上流階層が全員自殺しているエピソードも描かれている)、本当の戦争になったときには、おそらくこの映画を観ている若者たち自身が、あの泥と血にまみれた戦地に赴くことになるのだ。戦車はかっこいいが戦争は悲惨なものだ。描き方はどうあれ、そのことだけでも伝わればいいと思う。

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