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November 18, 2014

ローゼンメイデン第10巻

10ローゼンメイデン第10巻/PEACH-PIT 
集英社 ISBN-13-978-4088797779

幻冬舎発刊(バーズコミックス)の第1集初版が2003年。そこから8集で第一部(『Rozen maiden』)が終了し、発行元を集英社に移してヤンジャンで第二部(『ローゼンメイデン』)がスタートしたのが2008年。足掛け11年でついに完結を迎えた。自分らしさを否定する社会に心を閉ざした主人公・桜田ジュンの元に伝説の人形師が創り出したといわれる生ける人形・ローゼンメイデン第五ドール『真紅』がやってくるところから物語は始まる。「7体」のドール達は究極の少女‘アリス’を目指し戦いを繰り広げていた。その‘アリスゲーム’に巻き込まれることによって、ひきこもりのジュンは徐々に人生を動かし始め、ドール達とともに生きる意味を見出していく。(多少ネタバレ)

TBS・アニメイズム枠で放映されたローゼンメイデン第1期(2004年10月-12月)および第2期(『トロイメント』2005年10月-2006年1月)の完成度はずば抜けて高く、原作であるコミック版が物語を完結していなかったこともあり、第2部のスタートについてはやや違和感があったのは事実。しかも、いきなりパラレルワールドから始められたストーリーはどう収束していくのかまったく予想できなかった。ただ、‘巻かなかった世界(第1部ではジュンが送られてきた真紅のぜんまいネジを巻いて真紅を目覚めさせるところから始まるが、第2部は真紅は目覚めなかった=ジュンがネジを巻かなかった世界の約5年後から始まる)’のジュンの登場によって、物語はリセットされリピートし、かつ‘巻いた世界’との相互干渉(多世界解釈による別世界としての第1部が‘nのフィールド’によって繋がること)によって世界がメタ化していくに至って、新作は第1部のテーマを上手く引き継ぎつつより重層化して魅せることに成功したのだった。この物語構造のアイディアはなかなかのものだと思う。多世界解釈が出てくるの作品はいろいろあるが、やり直しではなく常に前向きの時間軸で語られるところは健全だ。巻いたジュンも巻かなかったジュンも、その時点で他の誰でもないということ。多世界と現在性を並存させているところがこの作品における独自性といえる。

引きこもり少年・ジュンの自立は第一部の中心テーマだったが、第二部では巻かなかったジュンの自立を再生するとともに、ドール達が生み出された謎とその存在意義が明らかにされていく。それはすなわち、いみじくも真紅が語る「人生とは闘うこと。生きること自体が戦いなのだ」という現実=アリスゲームに対する真紅自身の戦い方=答えを見つけ出すことでもあった。この物語を総括すると「自縄自縛からの脱却・無限に広がる人生の選択肢」ということにでもなるのだろうか。巻いたジュンも巻かなかったジュンも、他者の視線を気にするあまり、自分で自分の可能性を閉ざしてしまった。ドールたちも、お父様が彼女たちに与えたアリスゲームという試練に囚われ、一つの生き方しか認められなかった。その生き方に固執する水銀燈と新しい生き方を模索しようとする真紅のぶつかり合い、対比は、本作品の見所でもあった。そして、そこに出現した第7ドール(雪華綺晶)はアリスゲームのスタートラインにすら立てなかった(お父様から体を与えられず、強烈な思念だけが存在した)がために、逆説的にアリスゲームの呪縛から自由な存在であり、故に雪華綺晶と戦うことでドールたちは自身の存在意義=人生の価値に気づくことができたのだ。そこから導き出された真紅の「答え」には賛否あるだろうけれど、他人を犠牲にして築き上げられた幸せがいかに虚しいかを知る人は、この結末の正当性を強く訴えるだろう。姉妹たちと過ごす優しい時間の大切さ、その価値を最優先した真紅の決断を誰も否定はできない。

この10巻で全ての絡んだ紐が一気に解けていく。一読しただけではなかなか理解しづらいのだけれど、この作品は、生きることの意味、目的を持って生きることの素晴らしさを改めて教えてくれるはずである。未来は自らが選択することで開いていくのだ。

「巻きますか?巻きませんか?」

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