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February 14, 2014

ゼロ・グラビティ

原題は『GRAVITY』。すなわち「重力」。見終わるときに題名に込められたメッセージを理解するのだけれど、それからすると邦題はまったくの主客転倒。確かに物語の大半が宇宙空間=無重力で描かれているので、「無重力の映画」という意味では間違ってはいないが、あまりのセンスのなさにガッカリする。(ネタバレ)

Glavity_2邦題はアレだが、作品自体は前評判通り素晴らしいものだった。ストーリーは直線的で明快。デブリによって引き起こされた事故により宇宙空間に放り出された2人が地球に帰還するための決死行を描いている。主観的に進んでいくので、自分が宇宙空間に放り出された気分を存分に味わえる。3D映像もデブリの暴れっぷりに拍車をかけて、なかなか迫力がある。

無重力状態を再現できる装置が開発されて、そのお陰でこの映画が出来上がったような話があって、実際その装置で主演のサンドラ・ブロックがグルグル振り回されているメイキング映像もテレビで見た。なるほど宇宙じゃなくても酷い乗り物酔いになったに違いない体当たり演技だ。装置の効果と彼らの努力の甲斐あって、全編あたかも無重力状態にいるような動きが再現されていた。実際、科学考証もはいっているのだろうから、スクリーンに映し出される現象はかなりの確率で現実に起きうることなんだろうとは思うのだけれど、たとえばISSで火災発生したときの火の回り方とか、天宮のシーンで消火器一本で姿勢制御がどこまでできるんだろうとか、そもそも時速数百キロで移動している物体同士がマニュアルでシンクロできるものなんだろうかとか、人間がステーションにぶち当たったときの衝撃によって気絶したり骨が折れたりとかしないんだろうかとか、まぁ、とにかく疑問に思うところがたくさん出てきて、NASAに解説DVDでも作ってもらいたいぐらいだと思った。ただ、それはそれとして、娯楽作品としてはすごく良くできていて、主人公が陥る危機を知恵と勇気で乗り越えていき、最後に目標に到達するという展開はドラマのカタルシスを存分に味あわせてくれる。予定調和は当たり前で、そのプロセスにどれだけのドラマが詰まっているかが大事であって、その意味で大変満足できる一本である。特に、ストーン博士(サンドラ・ブロック)を生かすために自ら命綱を外すコマンダー、マット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)のアストロノーツ魂とか、ソユーズが燃料切れで万策尽きて死を覚悟したストーン博士が酸欠状態が生み出したマットの幻想で立ち直るところとか、いいシーンが満載で、こんな単純な物語空間の中に、しかも登場人物がほぼ2人にもかかわらず、ここまで魅せてしまうのには感嘆するほかない。

さて、原題の『GRAVITY』とのギャップについて。最後ストーン博士は無事地球に生還するのだけれど、到達したポイントはどこかの淡水湖で、ポッドが水没し彼女は宇宙服を脱ぎ捨て水面へと浮かび上がる。そして何とか陸地にたどり着き、弱った脚で立ち上がった彼女を下から仰ぎ見るシーンで終わる。この最後のシーンこそが送り手側の最大のメッセージ。人間は地球で生まれた生物であり(ストーン博士が陸に上がるシーンは進化の暗喩)、‘重力’を前提とした生き物なのだということを改めて実感するのである。そして、地球=重力なくしては生きられない人間にとっての地球を宇宙との対比を通じて考えるべきなのだ。その視野をこの作品は与えてくれる。彼女が大地に立つシーンは感動的ですらある。

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