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May 08, 2013

スキャナーズ

新宿武蔵野館でリバイバル上映。5/1のレイトショーで1000円ということもあってか満員の大盛況。制作年度は1981年。流石に32年前の作品だけに、今日自主制作映画でもこれぐらいは撮れるぞ的なチープ感、レトロ臭が充満した映像ではあるが、そこに映し出されるテーマや演出、様々なアイディアは当時からすると相当進んでいたものばかりだ。その先取り感を確認するだけでも十分楽しめるSFホラー映画である。(ネタバレ)

Scanners_2『スキャナーズ』は、人間の脳に直接働きかけることができる超能力者‘スキャナー’たちの戦いの物語である。‘スキャナー’は他人の脳神経系に侵入し、思念を伝えるだけでなく、その人間の神経や内臓器をも自由に出来る。制作された1981年といえば、日本ではちょうど超能力者たちの戦いを描いた平井和正と石森章太郎の『幻魔大戦』が人気を博していた。SFテーマでは超能力者は当時のトレンドだったのかもしれない。しかし、本作の真価はその映像表現にある。作中敵役のレボック(マイケル・アイアンサイド)がコンセック社のスキャナーを殺害するシーン=超能力で脳を破裂させる方法は、大友克洋の『AKIRA』での殺害描写や『北斗の拳』における北斗神拳の破壊方法(体内から破壊する)に影響を与えたとされている。低予算映画ながら、そのビジュアルインパクトによって当時でも話題になった。それにしても超能力者同士の戦いは実に地味だ。せいぜい人が吹っ飛ぶぐらいで、金属がへし曲がるとかビルがぶっ倒れるとかいった、ハリウッド的な派手な演出はなく、ひたすら演者が多彩な苦悶の表情を次から次へと繰り出すことに終始する。映像だけを見てしまうと‘変な顔コンテスト’の様でもある。ベイル(スティーヴン・ラック)とレボックの最終決戦はこれに特殊メイクを加え戦いの凄惨さを増量させているものの基本は同じ。最後の焼死体のグロテスクさは、クローネンバーグの真骨頂とも言えるだろう。そして、エンディングのどんでん返し(人格の入れ替わり)は、そこら中に出回っている精神感応系SF的作品(最新では『革命機ヴァルヴレイヴ』)の設定、エンディングの雛形のようなもので、本作はいろいろな面で近代SF系エンタメのプロトタイプ的存在なのである。

その中でも特に注目したいのは、ベイルがコンセック社のシステムを破壊するために、電話ボックスから電話回線を伝ってコンセック社のコンピューターに侵入したことだ。これは、明らかに‘電脳ダイブ’であり、それこそサイバースペースを意識した設定であろう。サイバーパンクブームの火付け役であるウィリアム・ギブソンの『ニューロマンサー』は1984年の作品。その3年も前に電脳世界がネットワークで構成され、コンピューターが人間の擬似脳であると見抜いていたクローネンバーグの慧眼には改めて驚かされる(コンピュータはテープ式で、基盤もおもちゃのようなスッカスカの描写というのが違和感があるというか妙に笑えるが)。

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