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April 29, 2013

ジャッキー・コーガン

原題は『Killing Them Softly』。主役の殺し屋・ジャッキーのモットーなのだが、やってることはちっとも優しくない。監督はニュージーランド出身のアンドリュー・ドミニク。5年前にブラピを起用して『ジェシー・ジェームズの暗殺』という作品を撮っている。脚本も監督が担当しており、現代アメリカの本質を切り取ってみせる‘監督の眼’が本作の肝であり、その思想的な部分に面白みを感じる。だから、この映画、観る人によっては全く面白くないと思う。(ネタバレ)

Jakie_cogan本作にドラマはほとんどない。淡々と賭場強盗の犯人たちをジャッキー・コーガン(ブラッド・ピット)が殺していく話だ。アクションらしいものもなく、主人公のピンチもなく、どんでん返しもない。画格は物静かでうら寂しい。何となく雰囲気として北野ムービー的でもある。また、冗長な台詞や無意味とも思える会話の積み重ねはタラ的なものも感じさせる。この作品が醸し出す雰囲気(演出のトンマナ)は嫌いじゃない。しかしそれ以上に、現代アメリカの本質のえぐり出し方がユニークで魅力的だ。それは、NYからわざわざ呼び出された殺し屋ミッキー(ジェームズ・ガンドルフィーニ)のエピソードに凝縮されている。凄腕との前評判とは違って、真昼間から浴びるように酒を飲み、コールガールを呼んでセックスに明け暮れる。妻との離婚問題を抱え、アル中でおそらく心臓病か糖尿病か患っているだろうと想像されるこの殺し屋の姿こそがアメリカの現実なのだと。崇高な理想を持ちながら、それを行動として実行することもままならない、ミッキーはそんな病理にむしばまれているアメリカのメタファーなのだろう。

物語の最後、仕事を終えて報酬を受け取ったジャッキーは、その金額が考えていたものと違ったことに怒りをあらわにする。「アメリカとはビジネスだ」という彼のセリフこそ監督が言いたかったことの一つだ。背後で空々しくオバマがアメリカが一つの共同体であることを力説している。結局は誰にも頼ることなくひとりで生きるしかない世の中(だから銃の携帯も必要なのだ。このテーマはミッキーの雁狩りのエピソードからも臭ってくる)、それがアメリカの現実なのだとジャッキーは言う。この対比、アイロニー。なんとなく作風はタラ的だ。ちょっと言い方がストレートな分、その結論に共感できないと、あるいはそこに現代アメリカの現実を感じ面白さを覚えないと、ふーんで終わってしまう。それでも、ブラピが殺しの元請として、それをビジネスとして遂行していくプロセスにおいて、プロフェッショナルとしての凄味や仕事に対してちょっと飽き飽きしているところとか、そういったどんな職業にもありがちな煩わしさや心理的な葛藤(殺し屋にだって日常は存在しているという当たり前のこと)をクールに表現しているところは、この映画を見るに十分な理由の一つに挙げていいと思う。

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