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January 31, 2012

外天楼

Photo外天楼/石黒正数

講談社 ISBN978-4-06-376159-7

2012年マンガ大賞ノミネート作品。メフィスト(講談社)で連載していたのでまったくのノーマーク。文芸誌まではさすがに追えない。石黒氏の構成力の素晴らしさに、エントリーも納得。ただ、扱うテーマがテーマだけに、「大賞」という趣にはちょっとばかしそぐわないかもしれない。(ネタばれ)

唐突に、ガキ3匹が何とかしてエロ本を手に入れようと本屋で奮闘するところから物語りは始まる。捨てられたエロ古本を見つけて3人で分けるとき、主人公のアリオはその捨てられ方に不自然さを感じ、エロ本の謎を推理し始める。こういった謎解きは石黒氏の得意とするところで、なるほど、このマンガはこういった身近なミステリー話のオムニバスなのかと、最初は思う。第2章はいきなり10年後にジャンプし、アリオと3匹のうちの一人ダイチが話しているシーンから始まる。ダイチは役者でヒーローモノに出演していたが、番組関係者が起こした殺人事件がもとで首になってしまったのだ(彼自身は犯人ではない)。本編はヒーロー番組内で起きた殺人事件を描いているが、これはメタで、そういう番組だったというオチ。この辺のギミックも石黒氏らしい。

この後、下井(したい)という男の変死体が外天楼というアパートの一室で発見されるところから、物語は急展開していく。前章を引き取る形で物語は進み、この後起きる2件の殺人事件を通して、初期の章で語られたことが全て回収されていき、主人公アリオの秘密が明かされていく。そして悲しい結末へと収斂していくのだ。1話1話が非常によく練られた構成になっているだけでなく、それが全体を通じて見事に配置されている。この構造の作り込みはまったく見事で、何度か読み返すことで、この作品の良さを読むごとに実感してくはずである。

テーマについては、いわゆる人工生命を扱っている。ロボットであり、ホムンクルスであり、クローンであり。この手の話は倫理的にネガティブにならざるを得ず、悲しい結末になることが多い。ご他聞に漏れず、この物語もバッドエンドだ。冒頭のエロ本話がまさに物語(テーマの動機)の基点であることも、この倫理的側面を上手く象徴している。ただ、そこに新しい解釈は見当たらない。倫理を逸脱した研究者も登場するし、被害者である主人公たちはなすすべなく死んでいく。救いもなければ結論もない。その意味で、中身としては(「大賞」までいけるかというと)物足りなさを感じてしまう。良作である。でも、構成が完璧ゆえにエンディングは安易にも見える。また贅沢言ってるなぁ。

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