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November 29, 2011

ミッション:8ミニッツ

この映画の宣伝文句は「このラスト、映画通ほどダマされる」だが、何に対して騙されるのかがよくわからなかった。何が騙しだったのか、それがよく伝わらなかった時点で、この作品は失敗だったといわざるを得ない。決してつまらない映画ではない。むしろいい映画といってもいい。でも、せっかくのいいところを自ら台無しにしてしまっているのだ。(ネタばれ)

Misson_8minits まず、この作品を支えている‘プログラム’の設定そのものが破綻しているため、それを軸としたロジカルな要素は無視すべきだと、鑑賞しながら思った。気になるけど気にしちゃいけない。そうすることで、主人公スティーヴンス大尉(ジェイク・ギレンホール)の後悔の念(父親と仲違いしたまま自分が死んでしまったこと)が救われたことにホロっとし、バーチャルではあるけれど列車の乗客を救うというミッションを自分に課して最後のダイブに向かう彼の気持ちが、初めて共感できるものになる。上手くドラマに入っていくことができるのだ。死者の記憶情報を元に構成されたバーチャル空間へダイブして、現実とは異なる体験ができる‘プログラム’という設定は、あくまでスティーヴンスをそのような状況に置くための便宜なのだ、と割り切ることだ。

実際、アメリカの平和で幸せな社会(素人コメディアンを囲む乗客の笑い顔をストップするシーンは秀逸)が、スティーヴンスのような若者の犠牲によって支えられていることは、このストーリーから確かに伝わってくるし、スティーヴンス自身が救われる姿に(父親への謝罪とクリスティーナ(ミシェル・モナハン)との新しい生活)、穏やかな気持ちにもさせられる。しかし、せっかくいい気分に浸っているところで、再び現実に引き戻されてしまう不快感。これはなんともしがたい。少なくともオイラにとっては、最後のシーケンスはまったく不要だった。あれがくっついたことによって、この映画がいったい何の映画なのかが分からなくなってしまったのだ。

SF映画としたいのであれば、それこそ二流以下。謎解き映画としてみると、バーチャルな重層構造世界はありきたりだし、8分間の中での犯人探しもまったく捻りが利いていないので物足りなさが残る。スティーヴンスとクリスティーナが2人してモーニングコーヒーを飲みにいくところで終わってさえいればよかったのに(彼の台詞で、彼らがどこにいるかは十分理解できると思うのだが)。実に残念な映画だ。

さて、一応、‘プログラム’に対する自分なりの理解を記しておく。あくまで映画の中の情報だけからなので、これが正解というわけではない。送り手側が意図していない解釈かもしれないが、「一期一映」の精神(一回見れば送り手側のメッセージの大体は理解できる)からして理解させられないほうが悪い。

‘プログラム’というからにはコンピューター上で動くソフトなんだろう。つまり、人間の記憶情報をベースに状況を再現し、そのとき異なる選択をした場合の可能性をすべてシミュレートするシステム。しかし、一個人の記憶に、爆弾の設置場所も、犯人の乗っているクルマのナンバーも含まれていないはず。では、その‘事実’はどこから調達したのか。また、なぜわざわざ人間がダイブしなければならないのか。仕様といわれてしまえばそれまでだが(作中ではプログラムの詳細説明は一切ない)。分からないことが多い。

一番のポイントはラトレッジ博士(プログラムの開発者)(ジェフリー・ライト)自身が、これはタイムトラベルではないと断言しているところだ。あくまで、‘固定された過去のある8分間’の状況をコンピューター上で再現し、かつ量子力学の応用によってあらゆる選択肢を可能とする。タイムトラベルではないということは、現世界Aとプログラムによって再現される仮想世界Bは時系列的に繋がってはいないということだ。さらに、スティーヴンスが列車爆破を防いだ世界は、仮にそれが現存するリアルな多世界のひとつだとして(Bを現実世界としてしまうと、その時点でそれはタイムトラベルしたということになってしまうのだが)、現世界Aとは異なるBという時系列の世界になる(『シュタインズゲート』で言うところの異なる世界線)。このとき、スティーヴンスがグッドウィン大尉(ヴェラ・ファーミガ)に送ったEメールはなぜ届いたのか、ということが最大の疑問となる。電波が多世界と繋がっていることになり、もしそうであればそれこそ凄いことになってしまう。さらに、時間軸としても混乱している。現世界Aが我々のいる世界だとして、ラストのシーンはミッションを始める前のように見えた(スティーヴンスはまだ生きていた)。過去から未来へ、しかも多世界の壁を越えて飛ぶメールとはなんなのだろうか。あまりに杜撰な設定。

繰り返しになるが、このような矛盾を孕む‘設定’に、最後の最後立ち返ってしまうことが許せないのだ。こっちはその矛盾を全部飲み込んで、スティーヴンスがクリスティーナを救出し、リアルでは生命維持装置を停止させつつ、バーチャルでは2人で新たな生活を歩み始めるというハッピーエンドを楽しもうとしているのに。なぜ、あんな最後にしてしまったのか、いったい何が言いたかったのか、まったく理解に苦しむ。

「このラスト、映画通ほどいらないと思う」

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