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August 07, 2011

エネルギー論争の盲点

Photo エネルギー論争の盲点/石井 彰
NHK出版新書 ISBN978-4-14-088356-3

昨今の脱原発論争には、原発を止めてどうするのかその後のビジョンを明快にかつ合理的に示したものがあまりない。再生可能エネルギーでは現在の原発が生み出す電力を賄うことができないことは明らかになっているわけだから、反原発主義者たちは電力が足りない分はただ我慢すればいいとでも思っているのだろうか。家庭で15%節電をすれば凌げるような規模の話ではないことはわかっていっているのだろうか。短絡的思考で情緒的に叫んでいるようにしか見えない。本書は原発を止める止めないの二元論的論争に対し、これから日本が取るべきエネルギー政策の方向性を示している。

要はもっと天然ガスを使おうということなのだ。CO2排出の問題と資源を持たない日本の事情もあり、原子力は次世代の中心的エネルギー源として優遇、開発されてきた。しかし、今回の福島の事故によって原子力の危うさを再認識するにいたり、再生可能エネルギー=話題の中心は太陽光発電が注目を集めることになった。いつ辞めるかわからない首相はご執心だが、本書を読めば、首相の言う政策もペテンに近いような話だということが分かる。原子力のすべてが悪いと決め付けて極端に逆振れしてしまうのが恐ろしいが、さりとて現実を見ればおいそれと原発を止める訳にはいかないから、再始動の話を避けて通れなくなりコンフリクトを起している。勧善懲悪的構図というか、話を分かりやすくするために好んで二元論的議論にもっていくのは日本人の悪いところでもある。

著者は本書の中で、原子力は限定的に使用し(日本の核に関する技術力を維持していく上でも重要)、天然ガスをもっと取り入れながら、全体のバランスを考えたエネルギー政策を取るべきだとしている。シェールガスは現代の生活を維持できる数百年分の埋蔵量が確認されているし、CO2排出は従来の石炭火力発電の2/3になるし、発電効率も5割向上する。天然ガスは原子力よりはるかにローリスクで、相対的に環境にも優しいエネルギーということだ。再生可能エネルギーも含めて、それぞれの地域に合ったエネルギー(風が強いところは風力を、地熱が使えるところは地熱を)を効率的に使っていくことが日本国全体のリスク低減にもつながっていく。

そして、この方向を実現するためには、発送電の分離や電気事業の自由化など今の電気行政を大きく改革する必要がある。再生可能性エネルギーの有効活用が図れるエネルギーの地産地消には、今の地域電力会社統括のスタイルを変えなければならないのだ。しかし、現政権は脱原発を言うばかりで、その後に必要な話はほとんど聞かれない。

福島の件は明らかに人災だった。電源喪失という状況をほとんど想定していなかったかのような対応だったし、設備自体もあらゆる可能性を考え尽くして造られたとはいえないものだ。ホットスポットが広域に拡散し、汚染された食用牛も全国に拡散した(メディアは牛しか報道していないが、おそらく牛だけではないと思う)。これらの被害を東電がすべて補償できるはずもないのだが、それでも東電を潰さないということは、つまり今の電気行政体制は維持すると言っているのと同じことだ。発送電分離の議論は一向に盛り上がってこないのは、そういうことの証左だと思う。で、福島の補償費用や、再生可能エネルギーの全量買取にかかる費用、それら一切合切が電気料金に上乗せされ、最終的なツケは結局我々が払わされることになるのだ。本当に勘弁して欲しい。

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