« ファンタジーサッカーmini10 第5節プレビュー | Main | 視野狭窄 »

April 03, 2010

スペイン人はなぜ小さいのにサッカーが強いのか

Spain

スペイン人はなぜ小さいのにサッカーが強いのか/村松尚登
ソフトバンク新書 ISBN978-4-7973-5237-5

著者は筑波大出身。1996年に日本サッカーが強くなるためのヒントを求めてスペインに渡り、2004年にスペインサッカー協会が発行する上級コーチングライセンスを取得した。2006年からFCバルセロナのU12を指導し、2009年9月には帰国してFCバルセロナスクール福岡のコーチに就任している。世界最高峰のクラブで働く彼から見た日本サッカーとはどのように見えるのか。そして、日本サッカーが世界に伍していくためにはどうすればいいか、そのヒントがここに記されている。

結論的に書いてしまうと、日本人はまだサッカーを本質的に捉えることができていないからサッカー先進諸国に勝てない、ということだと思う。体格やフィジカルの強さは一側面でしかない。

「サッカーの日本化」という命題はここ数年言われるようになり、日本人の特長を活かせるサッカー=人もボールも動くサッカーというような理解になってきたと思うのだが、本書で解説されるスペインサッカーと日本の現状の対比における差を考えてみると、今の日本で流通しているサッカーは、ある意味すでに日本化された姿だということに気づかされる。Jリーグを見た欧州のトップコーチたちの感想が共通して「サッカーが下手」というところにも、日本のサッカーの問題点が浮き彫りになって見える。

筆者は、そもそも、日本の育成年代の環境に問題があると指摘する。トレーニングは試合をするために行うものであり、最終的な目的はそこで勝つことだ。スペインでは大人のリーグ戦と同じスケジュールで毎週末ゲームが組まれているという。日本は相変わらずトーナメントが主流で、負けたらそこでゲームする機会を失ってしまう。サッカーはゲームをすることで強くなることが出来る。高校サッカーなどで強豪と呼ばれるチームは、全国の強いチームと何試合も練習試合を行っているのはよく聞く話で、分かっているところは実践しているのだろう。しかし、それはあくまで練習試合でしかない。公式戦として、生きるか死ぬかの緊張感の中でゲームする機会も少ないのだ。だから勝利への執念や追い込まれたときの踏ん張り=メンタリティの強さが小さい頃から育っていかない。

また、サッカーを指導する側が知らないうちに野球的な脳になっているのではないかという仮説が提示される。野球はプレーが一つ一つ独立していて、攻守の切替もシステマチックだ。しかし、サッカーはすべてがフレキシブルで即興的。このスポーツとしての性質の違いを無視して、野球的なトレーニングが主流となっているのではないかということ。何のプレッシャーも受けない状況でパス練習をしても、止まったままの状態でトラップ練習しても、本当に使える技術としての習得には繋がっていかない。サッカーはサッカーをやることでしか上達しないという戦術的ピリオダイゼーション理論は本当に目から鱗である。

サッカーは本来ゴールを決めるためにしのぎを削るスポーツのはずだろう。ところが、日本は中盤選手がスターであり、華麗なパス回しが美化されてしまっている。個人の責任を強く追及しない全体主義体質が日本のゴール欠乏症の背景にあるとオイラ自身は考えているのだけれど、この時点で十分サッカーは日本化されていると言えないだろうか。なぜこのような日本化が許されたかといえば、日本は世界の辺境にあるからだ。サッカーの本場と真剣勝負をする機会がほとんどなかったから、自分たちの都合のいいように改変されてきた結果がこれなのだ。以前はアジアですらも勝てなかったわけだし、そもそもサッカーというスポーツ自体、日本の民族性からすると価値観がフィットしない。

日本人の特性として「組織的」というワードはたびたび耳にするのだが、サッカーにおいて本当に必要な組織はリゾーム型であり、日本の官僚システムのような縦割り組織はサッカーにおいてはまったく意味をなさない。自由かつ高い技術を持つ個人が主張しながら有機的に柔軟に結合するワークスタイル=リゾーム型は日本人が最も苦手とするところだ。もし、本当にサッカーを日本化しようとするなら、ピッチ上の選手それぞれの役割を明確化し、その働きを先鋭化させていくことだろう。それで勝てるかどうかは分からないが、「日本化」というのはそういうことだと思う。また、本書のタイトルにあるように体格云々を言うのであれば、徹底的にスペインサッカーのすべてをコピーするといい。すべてとは、育成から体制から何から全部である。そうすれば、いつかは確実にトップ10には入れるのではないか。それが出来てさらにオリジナルを超越しようとするときにプラスアルファが要求されるのだ。表面をいくら真似ても、その本質を理解しなければそれはコピーですらない。自動車や時計など、日本が世界に通用する製品を送り出してきたのは、やはり消費者が求める本質を突いていたからだろう。日本人は外のものを取り込んで改良していく能力に長けているのだから、それを正しい方向に向けさえすれば、日本のサッカーも十分世界に通用すると思う。日本人らしい「賢いサッカー」を目指すべきなのだ。

|

« ファンタジーサッカーmini10 第5節プレビュー | Main | 視野狭窄 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/77466/47974679

Listed below are links to weblogs that reference スペイン人はなぜ小さいのにサッカーが強いのか:

« ファンタジーサッカーmini10 第5節プレビュー | Main | 視野狭窄 »