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April 26, 2010

第9地区

数多あるエイリアン映画の中では異色の作品。エビのような異星人が難民として地球にたどりついてから、20年の月日が経った「第9地区」の話。比較的評価の高い作品だとは思うが、オイラ的にこいつを「SF映画」として評価するには些か抵抗がある。(ネタバレ)

District9

シナリオはよくできている(が多分にご都合主義的)。第9地区からの異星人立ち退きを推進する責任者ヴィカス(シャールト・コプリー)が、カフカの‘変身’のごとく、‘エビ’のDNAをもった人間としてMNUとギャングから命を狙われる羽目になる。突然降りかかった不幸をのろい、人としての浅ましさから命の恩人である‘クリストファー’を一度は見捨て、それでもギリギリのところで踏みとどまり自己犠牲の精神を発揮する。つまり、これはヒューマンドラマなのであって、SF的設定はその構図を作るための便宜でしかない(言い切ったな)。だって、‘エビ’に親子の絆があって、その一点で‘人間性’を共有しているのはいかにも変だろう。異星人である必然性がまったくない。真面目にやれば重くなるし、おちゃらけるテーマでもない。異星人というオブラートにくるむことでエンターテイメントが成立する、ちょっと小ズルイやり方だと思う。

SFとして観ようとすれば突っ込みどころはいくらでもある。一々論うつもりもないが、‘クリストファー’レベルの知能と技術を持っていれば、難民のような扱いに対して何らかの抗議もできただろうし、圧倒的な武力を行使しないのも腑に落ちないし、彼の息子は明らかに地球生まれであるにもかかわらず、完璧に司令船のシステムを操るのも不自然だ。親からの教育を受けていたから、というのならば、それだけの高い知能を持ちながら、だらしのない生活しかできない異星人とは一体何なんだろう。むしろそっちのほうが謎だ。

ヨハネスブルク上空に飛来したというところから、これはレイシズムのメタファーなんだろうということは容易に想像がついたが、異星人なんかよりもここに登場するナイジェリア人?のほうがよほどバイタリティーに溢れていて、ゆえにちょっとばかし差別的に描かれていたりもする。そこはいいのだろうか。

映画としては確かに面白い。現代の諸問題のカリカチュアでもある。ストーリー展開は小気味いいし、アクションもド派手で武器マニアにはたまらない。人間がはじけるのも、視覚的に痛さがなくていい。終わり方もほのぼのとしている。相手の身になって初めてわかる己の道というテーマからすれば、ファンタジー抜きの‘アヴァター’と言ってもいいかもしれない。しかし、SF映画の醍醐味はこんなところにはない。

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