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December 26, 2009

イングロリアス・バスターズ

相変わらずのタランティーノ節満載の映画ではあったが、エログロ大殺戮B級アクションとしてみるか、インテリジェンスが散りばめられたコメディとしてみるかで、多少趣は変わってくるように思う。客席からは笑いはこぼれなかったが、クスクス笑えるところは結構あった。たとえばSawとかとは違うのだから、それなくして、あれだけ人が無感動に、そして少々グロく殺されていく映画を見るのは正直しんどいと思う。(ネタバレ)

Inglorious_2よくできているようで、実は安っぽいご都合主義に支えられた脚本はあえて無視するとして(それでも、冗長になりがちな長めのタラ的モノローグも、本作ではしっかりストーリーに組み込まれて必然性が高く、台詞回しや会話は結構気が利いていたと思う)、タランティーノはこの作品で何がしたかったんだろう。モチーフはユダヤとナチの話なわけで、その部分においての解釈はおそらく欧米人にしか理解できないと思う。それにしても、そんな背景を知らない人間にとっても何か引っかかりがあって、なぜいまあえて第2次世界大戦のパリを舞台に選んだのかとか、その意味を考えたくなる映画でもあるのだ。

“バスターズ”の指揮官アルド・レイン中尉(ブラッド・ピット)は、捕縛したナチ兵士に対して制服を脱がせるわけにはいかないという。脱いでしまうとナチスだと判別がつかなくなるからだ。そして、彼はナチスの額にハーケンクロイツをナイフで刻み込む。こうすれば制服を脱いでもナチスであると判別できるからだ。一方、ドイツのユダヤ狩りで活躍するSSのランダ大佐(クリストフ・ヴァルツ)は、複数の言語を操り獲物をあぶりだすことに秀でる“ユダヤ・ハンター”だ。彼自身は自分のことを“探偵”と呼んでいる。ユダヤ人は容姿や生活スタイルで特徴的な部分はあるにしろ、人ごみにまぎれて暮らす分には正体がばれる事はそんなにない(ショシャナ(メラニー・ロラン)は最後までユダヤ人とは気づかれなかった)。インテリジェンスを屈指して隠れたユダヤを探し出すランダと、ナチス然とした敵を残虐に殺しまくる低脳極まりないアメリカ軍将校。このコントラストの妙味が、この作品の基本的な魅力であり、最後の「立場の逆転」で物語を昇華させている(気持ち、ブラピの下品さがクリストフ・ヴァルツの怪しさに負けていて、もっと徹底的に馬鹿っぷりが出せれば良かったのにと思ったのだけれど)。

教訓的なものを読みとるとすれば、見え(ている)るもの以外は信用するな、ということだろうか。ショシャナも結局フレデリック(ダニエル・ブリュール)に抱いていた微妙な感情のために命を落としてしまったわけだし、一連のイントネーションにまつわる話もそうだ。隠されているものを引き出すための探りあい、化かし合い。そのセリフの応酬にハラハラどきどきする。この作品のエンターテイメントとしての醍醐味は、正にこのセリフの畳掛けにある。実際これは戦争映画ではない。派手なドンパチはなく(映画の中の映画でしかない)、戦時設定を巧みに取り込んだタラ流メタファー満載の痛快アイロニーなのだ。

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