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November 12, 2009

SOUL RED 松田優作

今や伝説と化した松田優作。レッドレインで共演したアンディ・ガルシアをはじめとした彼ゆかりの映画監督、スタッフ、俳優、そして彼が残した2人の子供たちの証言によって、彼の役者としての本性に鋭く迫るドキュメンタリー。彼の短い人生で残された作品から年代順に名シーンをコラージュしながら、その表現の裏側に隠されている松田優作という「生き方」が解明されていく。仕立てとしては、証言者パートが大半を占め、優作本人のプライベート映像などが少なくファンとしては物足りないと思う。ただ、作り手側のメッセージは結構明確で、その点については共感できた。

Yusaku_matsuda 彼の何がカッコよかったんだろうと観ながらずっと考えていた。オイラにとっての松田優作は‘ジーパン’であり‘工藤ちゃん’なのだ。日本人離れした体躯で走り回る姿がカッコよく、無口でニヒルな演技がカッコよく、タフでハードボイルドなイメージの彼が3枚目をいとも簡単にカッコよく演ってしまうところもカッコよかった。しかし、実際、彼の評価は、アクションスターの前半生よりも、さまざまな役どころを鬼気迫る演技で駆け抜けた後半生によるところのほうが大きい。表面的なかっこよさではなく、あくまで内面の恐ろしさ、本人が言うところの‘暴力性’を追求していく中で役者としての凄味が研ぎ澄まされていった。『家族ゲーム』は彼の人生の中でもメルクマール的作品だ。

証言者の中で印象的なのは香川照之。優作本人から自分と似たものを持っていると言われたそうで、確かに彼の松田優作評は他の証言者と比べて本質に近づいていたように思う。彼曰く松田優作の魅力は「父性」にある。男らしさ、家族を引っ張る頼もしい存在、そういったものが強く備わっていたと。なるほど、単なる男としてのカッコ良さではない、強いだけではない、すべてを抱擁する優しさがあるということ。彼は、全感覚を使って相手の内面を感じ取り、それに対して柔軟に繊細に対応していくことを日常から実践していたという。それは演技ではなく、彼が人と接するときの作法といったものなのだろう。そして、それはそのまま映画作りに、役作りにつながっていく。

もうひとつの彼の信条は、決して妥協しないということだろう。常に最高のものを自分にも関わるスタッフにも求め作り上げていく。決して独りよがりではなく、人を納得させてしまう何かが確かにあったのだ。「父性」はここにもかかってくる。存在そのものが他者へ影響を及ぼしていく。宮台さんの『日本の難点』にあったように、カリスマの持つ資質である利他性が彼にもあったのだろう。利他というよりは、ひとつの作品を完成させるために自らの全てを捧げるというその姿勢にあったのではないだろうか。そして、現状に満足することなく、次なる高みを目指して進み続けた。本格的にハリウッド進出に成功して、これからというときに逝ってしまった。生きていればこそではあるけれど、彼が死んでしまったことで受け継がれる役者バカのDNAというものもあるのだと信じたい。

ここまで人に深く入り込める役者が今の日本にいるだろうか。そして、この先生まれてくるのだろうか。

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