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November 05, 2009

あなたにもわかる相対性理論

Sohtaiseiあなたにもわかる相対性理論/茂木健一郎
PHPサイエンス・ワールド新書 ISBN078-4-569-77204-2

著者はソニー・コンピュータサイエンス研究所のシニアリサーチャーで、専門は脳科学、認知科学である。物理学者ではない。ここが本書のみそ。彼はアインシュタインの信奉者で、アインシュタインに憧れて科学の道に入った人だ。実は、この本は相対性理論の本ではない。著者の思い入れによって上梓された(成り立ちは口述聞き取り書き起こしだが)アインシュタインの本なのだ。

1部ではアインシュタインの人生をなぞりながら彼を10の力に分解し、その人物を解明していく。この作業にほぼ8割がつぎ込まれている。その10の力は以下の通り。反発力、想像力、粘り強く考える力、平等力、ユーモア力、浮世離れ力、方程式力、信じる力、自立力、友人力。今、会社で企画力を高めるためにはどうしたらいいかといったプロジェクトがあって、一つの方法論として、“能力の高い人の模倣”というのがある。その観点からすると、本書などはまさしく最適なテキストといえる。アインシュタインの科学者としての特異性は、世の中の常識を疑い(科学の領域でいえばニュートン力学を疑ってかかること。当時の科学者でこれができる人はほとんどいなかった)、物事を根本から考えることができたというところに尽きるのではないか。その意味で、これまでのスキームが全く崩壊してしまった今日の日本を考えるにも、学ぶところが多いと思う。
肝心の相対性理論の解説はといえば、その手の入門書を読むほうがいいかもしれない。基本的な解説はされているものの、“あなたにも”わかるかといえば、少々無愛想だ。理系の人だけに、数式などのリテラシーは高く、読者の想定されるリテラシーのレベルがフラフラするので、文系の人間には唐突なところもある。巻末の『E=mc2』を生み出した3ページの論文も実際何の事だかよくわからない。やはり、理系の人の頭の構造はちがうものなのだと改めて思う。著者は彼の専門分野である脳科学において、『E=mc2』のようなシンプルな方程式によって脳の活動が説明できるのではないかという夢を追い続けている。神はサイコロなど振らない、というアインシュタインの言葉通り、この世界がある法則によって営まれているのなら、それはいつか発見されるのだろう。この世界は、わからないことが多すぎるが、それはすなわち、その謎を解き明かすというロマンがこの世の中に無数に存在しているということでもある。人生を賭けてなお到達できない謎に直面し、アインシュタインですら取り組むことをあきらめたこともあるし、実際相対性理論のその先にある統一場理論は彼の頭脳と人生という有限の時をもってしても明らかにすることができなかった。そのロマンを引き継いでいくのは今の子供たちだ。彼らにいかに好奇心を植え付けていくかは大事なことだ。そして、何世代もかかってでも、いつか人類は世界の根源にたどりつくことができるのだろうか。

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