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October 25, 2009

腹八分の資本主義

Harahachibu 腹八分の資本主義 日本の未来はここにある!/篠原 匡

 新潮新書 ISBN978-4-10-610327-8

2週間ぐらい前のサンプロで、今更のように長野県下條村の事例が紹介されていた。本書の第1章に掲載されているこの事例は、過疎の村の出生率が2.04にまで伸長したというもの。しかし、この話は1992年に伊藤氏が村長に当選して以来、さまざまな改善や施策の積み重ねの結果であり、昨日今日で達成できた話ではないのだ。おそらく、この本で紹介されているいくつかの事例のような動きは、日本国中いたるところに存在していると思う。そしてその成否は、当事者が当事者の問題としてとらえ、能動的に積極的にかかわって―それも永続的に―いけるかどうかにかかっているように思う。これらの成功事例は決して簡単に成し遂げられたものではないということだ。

第5章は農業と企業のこれからの関係を模索する動きを紹介している。産地と流通が理想的な連携を目指す岩手県住田町と九州屋。胡蝶蘭の技術を活かして地域を活性化した北海道赤平市とホーマック。生産者、企業、農協が三位一体で取り組む千葉県富里市。いずれも農業と地域の再生を目指した新しいスキームだ。農業従事者は企業に対して、だまされるとか搾取されそうとか、あまりいいイメージを持っていないらしい。だから、これまでもこれからも企業と農業従事者との関係はそう簡単に改善されることはないだろう。先日の報道ステーションでも、休耕地を集めて再生する事業を起こして奮闘する20代の社長が紹介されていたが、彼が相手にする70過ぎの年寄りの頭はとにかく固い。これまでのやり方に固執し、よそ者や新しいものに対しては拒絶する。これでは、周りがいくら頑張ってもどうにもならない。農政の問題をとやかくいっても、肝心の農業従事者の意識が変わらなければ進んでいかないということもあるのだと気づかされる。また、日本の農業を駄目にしたのは農協だという論調も多い。しかし、一方で富里市のような例もある。大事なのは、ひとくくりに駄目だというのではなく、一つ一つの事情に対してそれぞれの最適解を考えていくことなのだろう。この本で紹介されている事例はあくまで事例でしかない。この中から、自分たちの問題解決に寄与するヒントをいかに読み取るかが重要なのだ。
最後の第6章では、企業と地域の関係性について、長野県伊那市にある寒天メーカー、伊那食品工業の事例が紹介されている。企業そのものはオンリーワン技術で国内シェア80%、世界シェア15%を誇るエクセレントカンパニー。この企業力があってこそという前提はあるものの、塚越会長の「分をわきまえた」経営思想は、今日のギスギスした新自由主義、グローバリズムからすると新鮮に映る。利益を社員と地域に還元する基本姿勢は、むしろかつての日本が持っていた美徳ではなかっただろうか。企業が永続するかということとは次元の違う話ではあるが、それでもCSRが叫ばれる近年、“共に栄える”という感覚はもっと大切になっていくように思う。これは企業にだけの話ではなく、一個人と地域との関係においてもあてはまる。いずれにしろ、地域のことは地域で考える。この原則を全国に敷衍していくことこそ、地域活性化の近道であり、それを後押しするのが国の役目だろう。国は公平公正の意味を履き違えてはならない。

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