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September 03, 2009

日本の難点

Nippon_no_nanten_2 日本の難点/宮台真司 

幻冬舎新書 ISBN978-4-344-98121-8

『日本の論点』は文藝春秋から毎年11月に発行されている論争誌。幅広い分野について各界の著名人からのコラムを掲載している。この年刊誌を模して宮台真司が一人で“日本の論点”を論じている。
本家は一つのテーマに2つ以上の異論を掲載することで論争を促進させる仕組みだが、日本全体を俯瞰する視点がない。そこで宮台さんは一人ですべてのテーマを通してみることを試みる。ここには、宮台さんが見る現代日本の問題とその解決の方向が記されている。

著者自身の解説にもあるように、難解な専門書用語はほとんどといっていいほど見掛けない。なので、普通に読めば普通に理解できるはずなのだが、やはり内容は難解である。それは社会そのものが難解だからだと著者は言う。確かにそうだ。その難しい世の中を、例えば今回の選挙のように単純化してしまう政治は本当にいいのだろうかと思うようになるだろう。この本を読む価値はそういったところにあると思う。

コミュニケーション論(メディア)、教育論(若者)、幸福論、米国論、日本論と5つの章で組み立てられており、章単体で完結しているので、関心のある部分だけ読んでもよくなっているのだが、全編通じて根底に流れているのはポストモダンの社会観であり、それを前提としたこれからの日本のありようを提言している。

(ここからはちょっと怪しくなるが)彼はポストモダン社会のことを「社会の底が抜けた状態」であり、それに気づいてしまった状態であると定義している。そして、その抜けた底から人がこぼれ落ちないためには、社会の包摂性が非常に重要になると言っている。

P.135より引用
社会から「大きな国家」に移転されてしまった便益供与のメカニズムを、社会に差し戻す必要があります。(略)「小さな国家」&「大きな社会」への流れは、どのみち不可避なのです。「大きな社会」、すなわち経済的につまずいたりちょっと法を犯した程度では路頭に迷わずに済む「社会的包摂」を伴った社会を、グローバル化の流れの中で、どうやって作り、維持するのか。

この考えからすると、小泉改革の失敗は国家を小さくするだけで、それに対となる「大きな社会」を構築しなかったことにあるということだろう。政府は政府でやったから、あとは国民一人一人、民間それぞれが自立的にやればいいと放り投げた結果が現状、ということだ。

「社会的包摂性」といわれて真っ先に思い浮かべるのは町内会だ。”人の顔が見える”レベルのコミュニティが身近に確実に存在していたが、いまの世の中どうなっているのだろう。すくなくとも自分が住んでいるマンションにはそのような組織は存在しない。実家の居住区には町会はあったがマンション自体は参加していなかった(だからお祭にも”公的”には参加できなかった)。マンションにはたいてい自治会があるが、住民同士のコミュニケーションには、昔のような長屋感覚のものはないかもしれない。学校を中心としたPTAという集団もあるが、子供がいない世帯には関係ない。コミュニティの網からこぼれる人はどんどん増えていく一方だ。それは孤独死する人たちの人数をみればわかる。

地域軸以外だと”親戚”という塊がある。しかし、これも少子化に伴いその塊の大きさは収縮していくし、血族意識も現代的な感覚からすると前時代的になってきている気もする。親の面倒をだれが見るとか、両親を失った子供をだれが見るとか、近親者間ですらその「包摂性」が失われつつあるのが今ではないだろうか。本書の最後で「包摂性」の具体例としてあの”チェ・ゲバラ”を挙げている。利他的であることが他者からの尊敬の念を集め、あの人のように自分もならねば(感染的模倣)と思わせる根源になるのだと。さて、いまの日本に自分の身をなげうってまで国民に範を示せるような政治家や官僚はいるだろうか。理屈は理解・共感できても、その実現性はどうなのか。実は、そここそが一番の”日本の難点”なのではないだろうかと思うのだ。

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