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May 25, 2009

日本再生の戦略

Nipponsaisei 日本再生の戦略/天児慧
講談社現代新書 ISBN978-4-06-287989-7
著者は現代中国研究の専門家だ。あとがきで、なぜ中国専門の自分が日本の再生についてこれだけ書くのか、その心情を吐露している。今日本は危機的状況に陥っており、何とかしなければならないという気持ちが書かずにはいられなくさせているのだそうだ。前出の『自由と民主主義をもうやめる』など、このような危機感、焦燥感は識者の間で確実に広まっているように思える。

しかし、少なくとも政治家や官僚が同じ危機感を持っていなければ、いくら叫んでもこの国は変わらない。今の政府にそれだけの危機感はあるだろうか。景気景気と目先のことばかり追って、中計を見誤るとまた大きなつけを払わされるようなことにもなりかねない。ここに書かれている解決策はあくまで中期的なビジョンであり、方向性を示すものだ。かなり具体的な施策として紹介されている部分もあるが、それほど目が覚めるようなアイディアではないし、どこまで実効性があるかどうかはこれだけではよくわからない。中にはすでに、小さいながらも試みが始まっていることもある。問題なのはその動きをいかに具体化できるか、そして国家レベルにまで昇華できるかにある。

個人的には、人口や経済の諸問題は東京一極集中が解消されるだけでかなりな部分解決できると思う。地方からの人口流入→都市部の生活コストの上昇→核家族化による育児工数の不足→生活における出産育児リスクの高騰、といった構造が横たわっていて、その連鎖をどこかで断ち切らないといけない。東京を中心とした大都市部の人口密集度は近々飽和状態を向かえ、高齢化や収入格差の問題や低価格労働力の問題と合流して、都市部にスラムを生み出すだろう。到底安心して子供を育てる環境など望むべくもない。日本各地に人が散らばることで、それぞれの地域が活性化していく。地域に適した産業を再興していくことで地域が元気になっていく。それが一つの日本社会が目指すビジョンのように思う。ただし、これらは権限、財源、人間をセットにして地域に配布しないと難しいし、国主導で強制的に人口分散するような施策を導入しない限り、なかなか動かないだろう。道州制は一つの有効な形だと思う。

著者はGDP神話からの脱却を唱える。その代わりの尺度としてGCP(Gross Comfortable Product=快適性生産総量)という概念を提示している。そのココロは、経済至上主義を改め、国民がいかに暮らしやすい社会を作るかというところにある。先日、破産寸前のGMの経営陣がわれ先に保有株を売却したニュースが流れたが、アメリカの言う資本主義の正体とは所詮はこんなものなのだ。日本は、中韓を除いて、世界からは好感を持って受け入れられている稀有の国でもある。その長所を自覚し、脱アメリカの舵を切るべきときに来ていることは間違いない。

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