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May 05, 2009

論争 若者論

Wakamonoron 論争 若者論/文春新書編集部[]

文春新書 ISBN978-4-16-660665-8

「論座」から「文藝春秋」まで、十九人の識者による重要論文・対談十三本をピックアップ。不可解な若者の激増が社会のせいか、単なる甘えなのか、若者をめぐる議論を一瞥できる一冊。ワープアからアキバ事件まで、最近の若者について識者が色々な切り口で論じている。

本書の中では宮台さんの主張が一番しっくりくる。しかし、現実問題としてある不備なセーフティネットはどうにかしなければならないだろうし、やる気のあるやつは確実に救わなければならない。自分が生きたいように生きて行き着いた先には、やはり大人である以上自分で責任を持たないといけないが、その先に何が待っているかを教えてやらないままなのはアンフェアだ。

収録されているテーマで気になったのが2つあった。

一つ目は巻頭に収録されている赤木智弘氏の2007年の論文。フリーターとしての経験を通じて、いま存在する既得権や人間性を軽視する序列をリセットできるなら戦争になればいいというのだが、なんと他力本願なことか。

運悪く就職氷河期にぶち当たって路頭に迷った連中には同情はするが、それでも前向きにまっとうに生きている人間はたくさんいる。知り合いのかつてロッカーだった男は、渡米した時に現地でユニークなパンと出会い、それを日本で広めるために一人で事業を興し、いまでは工場施設を整えるために銀行からまとまった金を引き出す算段をしている。他方で、40にもなって会社を辞め自宅警備を始めてしまったやつとかも知っているが、とにかくグダグダ文句言う暇があったら社会に出て自分で自分の居場所を作れと言いたい。自分というものがないからいいように企業に使われる。その状況を作り出したのは自分自身だ。まったくノーチャンスということはなかったはずだ。また、景気がまだよかったころはこれもありかと流されてはいなかっただろうか。それが突然の不況で状況が変わったからといって、それを社会のせいにするその主張には甘さを感じずにはいられない。戦争になれば東大出の人間を部下としてどなりつけることができるなんて妄想もいいところだ。いまはフリーライターとして活動しているらしいが、先日も「喫煙が迷惑なら子育ても迷惑だ」なんていう、とんでも主張をして各方面から集中砲火を浴びていた。どこか世間と乖離しているところがあるんじゃないだろうか。

もう一つは後半2編に取り上げられていた「アキバ事件」の犯人についての分析だ。彼の行為を「テロ」と捉えるのが一つの見方として定着しているらしいが、オイラ的にはそこに政治的なメッセージは全く読みとれなかった。ワープアとかあまり関係がないんじゃなかろうか。とどのつまり、本能的に生きていきながらも、他者とのコミュニケーション不全に自らのプライドが傷つけられたと錯誤し、自分と一番近い所にいるだろう「アキバ」に集まる同志たちと「つながるため」に殺した、と読めるのだ。ネットで無視され、職場で作業着を隠されたことで「リアルでも存在を消された」ことがトリガーになったのではないか。政治的メッセージを発信するのであれば、霞ヶ関や勝ち組のいる銀座や六本木を狙えばいい。でも、彼は「秋葉原」を選んだ。彼は、本当は救われたかったに違いない。

赤木氏は、「大きな物語」の中でしか生きられない人の典型なのだろう。戦争という物語の中で、国が決めた序列に組み込まれることを望んでいる。一方で、「アキバ事件」の犯人はポストモダン的に生きながら、最終的にその孤独に耐えきれなくなった。いずれも現代日本社会とはどこかしら相容れない人たちなのだ。こういった連中を社会としてどう救済するかはまた難しい問題だ。最低限の生活を保障してやれば良いということでは解決できない。金銭的なもの以上に、もっと社会とのつながりが必要なんだと思うし、それ以前に、今の社会がどんな仕組みで動いているかを教えてやるべきだったのではないだろうか。競争して生き抜かなければならない世の中なのに、競争することを教えず個性という幻想だけを植え付けてきた教育にも問題があると思う。

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