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April 25, 2009

自由と民主主義をもうやめる

Jiyutominshushugi 自由と民主主義をもうやめる
佐伯啓思 幻冬舎新書ISBN978-4-344-98097-6

まだアメリカに従いていくのか?というタタキ文句の通り、アメリカとの関係性を見直す時期に来ているということなのだろうと思う。本書は、ニーチェのニヒリズムやアメリカのテロとの戦いの構造的な問題などを解説しながら、自由主義、民主主義が絶対のものではないことを認識すべきと主張している。「もうやめる」というタイトルはすなわち「脱アメリカ」を意味している。その点においては賛同する。しかし、筆者の現状の日本に対する焦燥感は伝わってくるが、どうすればいいという肝心のところになるとぼやけてしまうのだ。西欧の精神に対比させる形で日本的な精神である「無常」に突破口を求めようとしても、結局その具体的なものは示されることがなかった。日本はどこへ進むべきなのか。思想の輸出元であるアメリカ自身が自由主義経済や民主主義に対して疑問を持ち始めている今こそ真剣に考えるべきことなのだが、政治屋さんたちはどうにも自分のことで手一杯のようで、なんとも情けなくなる。

本書は、今の日本においては保守と左翼の対峙が捻じれているという指摘から始まる。本来保守党として認識されていた自民党は、小泉某の登場により日本のこれまでの体制を破壊することを推進した。その時点で、自民党は革新党になった。対して本来左翼的な立場である野党は改憲阻止など戦後体制を保持することを活動の柱に置いているように見える。そもそも、敗戦によって日本社会はアメリカの価値観の洗礼を受け入れ、進歩的な国家として生まれ変わった。この時点で、日本の伝統をある意味否定する社会が出来上がったのだ。そこを基準とすれば日本に保守政党は存在しない。

キリスト教を背景とした西欧の精神は、日本古来の精神とは正反対といってもいいぐらいの性質のものであるはずだが、日本はアメリカの価値観、歴史観の都合のいい部分だけを取り入れ高度な社会主義的なシステムを作り上げた。これにより戦後の驚異的な経済成長が実現する。しかし、あろうことか小泉某はアメリカの意向を受け、日本独自の社会体制を崩壊へと導く。自由と民主主義をもうやめる、のではなくこれから本格的な資本主義と自由主義が始まろうとしている。その歪みは派遣問題や年金問題などに現れてきている。この歪に対して筆者は危機感を持っているのだろう。あまりに日本人の性質からかけ離れている価値観を目の前にして戸惑っている。そのようにも見える。しかし、今話題の非正規社員問題は雇用機会の不均等が原因とされており、さらに人材の流動化を促進することでこれらの問題は解消されるという意見もある(ただし格差はなくならない)。農業にしても自由化すべきという議論が活発だ。新自由主義的な政策を推し進めることによって改善されることはまだあるように思える。一方で、認識の違いはあれど、このまま行っていいものかという不安感は筆者と同じようにあるのも確かだ。

そもそも、日本人とはいったい何者かということを日本人自身よくわかっていないのではないか。アメリカの価値観を濃厚に注入されたことで、日本人としての本質がぼやけてしまったということはあると思う。自身をちゃんと認識できていないから、その進む道も見えてこないのではないだろうか。
日本人を培ってきたのは日本の風土だという話を司馬さんの対談か何かで読んだ覚えがある。西洋人はキリスト教を原理として真実を探求し自然を克服する精神が根付いている。一方日本人は宗教的にはアメニズムが中心にあり、自然と調和することがその精神である。日本は台風や地震という天災によって農作物や家屋に甚大な被害がもたらされることが常態化しており、それは人の力では何ともしようがないことで、頭を低くして過ぎ去るのを待つしかなかった。だから日本人は忍耐強いし、自然に抗わず人々と助け合って生きるということ=調和することに長けた民族になったという(そのかわり、その原因を追究することもなく、その場が過ぎ去ればいいという悪癖も抱えこむことになった)。世界的に見てもこれだけ公共性・モラルが高く他者のことを考える民族もいないらしい。それは日本人としての美点であり、また生き馬の目を抜くような社会が当たり前の国からみれば「お人よし」と映る部分でもある。

脱アメリカ(とはいえ貿易と防衛は難しいだろうな)を標榜するにしても、中韓北という環日本海の情勢に対しても、日本はもっとしたたかにならないといけない。資源もなく人口も減っていく日本の国力は放っておけば衰えていく一方だ。日本の美点を保ちつつ、国家の利益を国際社会の中で守っていくためには、やはり欧米と対等に渡り合った明治から昭和にかけての精神に学ぶべきところが多々あるのではないだろうか。このまま保守的(現状維持という意味で)にいっては埒が明かない。怖がっていては、いつまでたっても先に進むことはできないのだ。日本的な新自由主義がどこかにあるはず。そのビジョンが提示できれば勝ちなんだけどなぁ。

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