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March 08, 2009

チェンジリング

これでオスカーが取れないのか。「愛を読むひと」のケイト・ウィンスレットは見ていない(日本公開は6/19予定)ので何ともいえないが、少なくともこの作品においてオイラがアンジェリーナ・ジョリーという女優に対して持っていたイメージは大きく変わった。(ネタバレ)

正直なところ、『トゥームレイダー』の“ララ・クロフト”に代表されるタフでアクティブな女性役が多いせいもあり、なんとなく繊細な心理描写などは上手くないのかなぁと勝手に思っていた。プライベートの露出もちょっとバカップルっぽいところが強調される感じで、どちらかというと人気先行型というイメージが強かった。ところがぎっちょん、本作において、息子を失った母親の苦悩をこれでもかと五体全てを使って表現する彼女の演技には本当に鬼気迫るものを感じた。不安、戸惑い、恐怖、怒り、寂しさ、悲しさ、ありとあらゆる負の感情が、まるでカタログのように―特殊メイクと言ってもいいぐらいの1920年代の化粧がそれを増幅しながら、めまぐるしく表現されていく(特に「目」と「手」が彼女の表現の基本)。そして、さまざまな苦難を乗り越えた末に見せる彼女の笑顔のなんと生き生きしたことか。やわらかくおだやかで美しい笑顔。素敵です。自分の子供を生んだことで、この作品におけるクリスティン・コリンズに対する感情移入は完璧だったのではないだろうか。その心理的な理解と共振を基に繰り出される演技はまさに“リアルシング”だった。

Changeling 物語はおよそ80年前にアメリカ・ロサンジェルスで起きた児童大量虐殺事件がベースになっている(クレジットには“真実”と記載されているが、全てが真実ではないようだ。特にノースコットが死刑になって以降は創作らしい。またLA市警の腐敗具合もやや誇張されている感がある)。イーストウッド監督は、この実話を用いながらいろいろなことを観客に伝えようとしている。公権力の危うさについて、死刑(実際の執行場面を再現している。ちょっとえぐい。映画で描かれているように、本当に昔は関係者が刑の執行に立ち会っていたのだろうか)あるいは死について、正義あるいは信念について、そして希望について。題材としては、北朝鮮拉致問題に通底するところがあり、80年も昔の話ながら比較的身近な問題と捉えることもできる。変質者による大量惨殺も“今日的だから”こそいかにもありそうな話だ。しかし、いろいろ物語的に詰め込んであっても、今回ばかりはアンジーの演技に勝るものはなかったのではないかと思うのだ。

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