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February 24, 2009

本質を見抜く力

Honshitsu 本質を見抜く力-環境・食料・エネルギー
養老猛司/竹村公太郎 PHP新書 ISBN978-4-569-70194-3

石油、水、農作物あるいは環境問題という現代社会における生活インフラについて、2人の老賢者(第6章ではゲストとして神門善久氏を招いて日本の農業問題について議論している)が対談形式でいろいろ語っているのだが、ここではテレビなどで報じられる論調とはちょっと違った視点で話し合われているのだ。それは第3章の「少子化万歳!-小さいことが好きな日本人」というタイトルからもうかがい知れる。

たとえば、食物自給率がよく問題にされているが、40%という数字は“カロリーベース”であり、金額ベースに直すと70%ぐらいになるそうだ。“カロリーベース”とは現在日本人が“消費”しているカロリーに対して自国でカバーしている分を示している。しかし、うなぎや牛肉などの高カロリー食品は海外依存度が高いし、メタボだ何だと騒いでいるのも、結局現代日本人が余計にカロリーを摂取していることが一因であるといえそうだ。となれば、健康的な体を維持していくために必要なカロリーがもし仮に今の2/3であれば、カロリーベースでも自給率は70%ぐらいにはなる。“カロリーベース”の数字はいわば贅沢度を示す数字といってもいい。食物自給率の問題は、確かに自国農業を見直す契機にはなったが、ペテンのような数字を使って誘導するのは政府とマスゴミの常套手段であるということも忘れてはならない(話は違うが、あの「年金点検」の数字もそうとうペテンが混じっていると思うよ)。また、金額ベースで70%ということは、国産品は付加価値が高いということであり、実際中国の金持ちは好んで日本の米を食ってたりする。農政も護送船団方式を止めて自由化すればいいと思う。日本の農業はそれほど脆弱ではないし(漁業の方が問題は大きいらしい)、その過保護な政策が逆に弱体化を促進しているように見える。弱体化しているから魅力がないし、魅力のない職業には若者も進んで就こうとは思わないだろう(結果高齢化はさらに進んでいく)。国がリードしてそのベクトルを作っていかなければならない。今はその好機ではないだろうか(しかし、国の動きはよく見えないな)。

養老先生曰く、近代というのは「正しいやり方がある」と思い込んでそこに集中した時代であると。しかし、そんなものは幻想で、今は「正しい受け取り方しかない」のだそうだ。この考え方は見事にポストモダンの潮流にマッチする。だから、「モノの見方を鍛える」ことが重要だと説かれる。それはいろいろなものをいろいろな角度から見ることで鍛えられるのだろうなと思う。メディアにしても一ブログにしても、それぞれが一つのモノの見方でしかない。しかし、いくつも集まれば見ている対象の一部が実は“欠けている”ことが見えてきたり、その裏側にあるものも推測できるようになるかもしれない。本書に書かれていることを鵜呑みにすることも、この観点からすればどうかと思うが、大きな方向性として、右肩上がりの拡大路線を基本に物事を考えるのは止めにして、人口減少を前提として日本という国のシステムを組み直す事が求められていることだけは確かだ。一つは脱石油文明であり、もう一つは日本の独自性をどうやって世界にフィードバックしそこで稼ぐかである。環境対応を含め「モノづくり」「技術立国」日本はまだまだ捨てたもんじゃない。官僚にだってこの竹村さんのような至極真っ当な人もいる。今こそ、日本の大計を世界に示すときではないだろうか。

ただ、日本人は自分自身を客観的に説明したことがないという養老先生の弱点についての指摘と、現実の政府や政治家の対応がちょっとばかし気分を暗くするのだった。

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