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February 01, 2009

チェ 28歳の革命

偉大な革命家でカリスマ的存在ともなっているチェ・ゲバラの、闘士としての半生を2部作で描く歴史ドラマの前編。ドキュメンタリータッチで、彼のキューバ革命の軌跡を淡々と辿っていく。“淡々”すぎて、ゲバラやキューバ革命についての予備知識がないとちょっと理解しにくい部分もあるが、しかし、それでもかまわない。この作品の主題は、帝国からの搾取と圧政に苦しむ人民の解放に尽力した、一人の男の赤心にあるのだから。“祖国か、死か”、キューバ人ではないチェが、なぜここまで他国の闘争に没頭していったのか、その心情が“淡々”としているがゆえにジワジワと画面から、あるいはベニチオ・デル・トロの渋い演技の中から染み出してくる。1964年国連でキューバの代表として米帝国主義を痛烈に批判する演説シーンはこの映画のハイライトの一つだ。

Che_28_ma 本編は1958年のキューバと1964年のニューヨークを行き来しながら進んでいく。最初は時系列的に混乱するところもあったが、キューバをカラーで、ニューヨークをモノクロにすることで、切り替わりがわかるような配慮がされている。
パート1である本作は、メキシコでカストロと出会うところから、ハバナ陥落の一つ手前であるサンタ・クララ戦の勝利までを描いている。キューバ上陸で82名がたった12名にまで減ってしまったところから、山間部での地道なゲリラ戦を繰り返すうちに、農民の中にくすぶっていた政府に対する不満を吸収しながら、民兵組織としても拡大していく。注目すべきは、ゲバラのモラリストとしての側面だ。部下たちには、農民から食物を奪うことを厳しく禁じ、彼らのために戦うことを徹底させる。その規律を犯したものには容赦ない制裁が加えられる。民兵組織が強大化し、ナンバー2のポジションについてもなお彼の信条(この戦いを『クーデター』=政権転覆ではなく『革命』=人民の解放と捉えていた)は揺らぐことがない。この信念を貫き通したからこそ、革命は民衆にまで広がり成功へと導くことができたともいえよう。拍子抜けするようなラストシーン(ハバナへ向かう行軍の中で、場違いなオープンカーに乗っている兵士たちを見かけたゲバラはその車を止めさせる。明らかに盗んだものであり、ゲバラは彼らに盗んだところに戻すよう命じる)は、彼の人柄を示す象徴的なエピソードだ。人道的でありながら、一方で裏切り者を冷徹に処刑するそのストイシズムが、ゲバラの根底には流れている。そして、それが結局彼を死へと導くことになるのだろうか、とふと思った(後編が早く見たい)。
さて、この世紀のカリスマをデル・トロは再現しえたのだろうか。実物の映像は見たこともないのだけれど、それでも、チェ・ゲバラとはこんな人物だったのではないだろうかと思わせるぐらい、デル・トロのゲバラは堂に入っていたと思う。本人よりもルックスに見劣りする役者が演じたとも言われているらしいが、容姿は似ている似ていないも含めて問題ではない。妙に芝居がかったところもなく、ゲバラの優しさと苛烈さの両面を自然に演じきっていた。また、固定カメラ、長回しを多用し、出来事を切り取って並べていくような映像演出は、変な解説が加わるより、伝記としてのリアリティを醸成するのに効果的だった。この作品は、名優デル・トロと映像演出によって、チェ・ゲバラという人間の本質にどこまで迫れているのだろうか。ほとんど何も知らなかった自分でも、チェ・ゲバラの行動原理は理解できたのだから(それを魅力と思うかどうかは別だが、少なくともデル・トロのゲバラはかっこいいと思う)、まずまずそれは成功しているのだろう。後編が楽しみだ。

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