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October 27, 2008

検索バカ

Kensakubaka 検索バカ/藤原智美

朝日新書 ISBN978-4-02-273240-8

タイトルは「検索バカ」となっているが、この本の目的は、現代人の思考停止をなげき、考えることを勧めることにある。

「空気を読む」ことが最近の若者の間では常識になっているようだが、「空気を読む」こと自体は日本が太平洋戦争(いやそれよりも前か)に突入していったときにも存在し、「空気」はそこに居合わせた当時の権力者を見えない縄でぐるぐる巻きにしていたのだ。予定調和や同調圧力の事例を通じて、この得体の知れない「空気」を解析しながら、自分の意見を表に出さず全体に融け込んで生きることの危険性を訴えている。

「検索バカ」とは、何でもかんでもググってそれで良しとしてしまう連中のことを指している。実際、最近の大学生のなかには、試験の論文などをネットからつまみ食いしておいしいところだけ切り張りして出したり、酷いのになるとウィキペディアをまるまるコピペっていうのもあるらしい。まったく自分自身が0から考えたものなどはなかなかというよりほとんどないのだが、実際いろいろな文献を読んで最終的に自分の頭の中で再構成されたものこそが自分の意見になるわけで、その「自分で考える」という行為を検索して見つけることに代替し放棄してしまっている状況がある。自分を振り返ってみても、時間がないと、どうしても探してコピペにならざるを得ない部分は確かにある。しかし、それでは商売にならないのだ。自分の頭で考えて始めてそれが価値を持ち、売れるのである。自分がそういう立場にいるから、あるいは作家先生のように自分の力で創作しない事には食っていけない人であれば、こんなことは当たり前に分かる。しかし、考えないで生活できる人もたくさんいるのだ。それが、結構恐ろしい。

「空気」の話であれば、その場を盛り上げたり、スムースに話を進行するために、参加者はそれぞれに暗黙の役割が与えられ、その役割をその場限りで演じていくのだそうだ。だから、たとえ本心は違うと思っていたとしても、その場の空気にあったことを話し、やらなければならない。同調圧力や予定調和はその場の空気のベクトルを決定し、参加者に対してそのベクトルに乗ることを強要する。乗らないと赤軍に粛清されたり、オウムにポアされたりするのだ。「日本はなぜ敗れるのか」でも書いたが、組織内に自由な意見を出し合う風土というか雰囲気がなければ、みな上っ面だけのコミュニケーションで終わってしまい、組織は正しい方向に活性化していかないという当たり前のことをどのように打破していくのかが重要なのだ。自由な意見を出させなくしているプレッシャーの元凶を取り除かない限り、「自分の意見」は決して表に出て行くことはない。で、その元凶とは、とどのつまり「責任性」の問題と言える。

若いときに村八になることを恐れて同調を繰り返すと、それが常態化していく。そして、思考停止に陥る、あるいは自分の意見を持ったとしても決して表に出すことはしない。結果が分かっていても流される人間。そんな人間が、これからどんどん増えてくるとするならば、また、あの時代を繰り返すことになるかもしれない。恐ろしいことだ。

終章に「生きることは考えること」というタイトルがついている。しかし、これ以前に、考えるからこそ人間なのではないだろうか(「我思う、故に我あり」ですよ)。考えることを放棄した瞬間、人間は動物化するのである。

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品格とは、もともとある特定の人々に備わったものとしてみられてきました。 つまりだれでもが品格をもつということはありえないのです。 一生懸命がんばってつくりあげるものではあ... [Read More]

Tracked on November 18, 2008 at 04:18 PM

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