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September 22, 2008

リアルのゆくえ

Realnoyukue リアルのゆくえ おたく/オタクはどう生きるか
大塚英志+東浩紀 講談社現代新書 ISBN978-4-06-287957-6

対談の半分も理解できていない。が、かつて学生時代、ニューアカが隆盛を極めていた頃は、この手の文章は嫌というほど読んでいたし、評論の世界とカルチャーの世界はとても近い存在で、普通にYMOを聴いたり朝日ジャーナルを読んでいれば、意外と自然に入っていけた時代もあった。単純に歳を取ったということなのだろうか。ところで、今の若者世代でこの手の小難しい屁理屈を喜んで読んでいる連中って一体どんなやつらなんだろう。一度見てみたいな。

正直脚注を目一杯つけてくれと、読みながら頭の中で叫んだしまった。出てくる固有名詞(作家や作品、批評家など)についての知識は、せいぜい名前だけ程度のものがほとんどだから、かろうじて文脈の中で理解するのが精一杯。知っていればもう少しは噛み砕けたと思うのだが(あとがきに、この悪さ=注釈を全部取ったのが大塚英志だったことが判明。確かに、自分で調べて自分の頭の中で咀嚼しなければ意味はないということなのだ。それはわかるが、それにしても了見が狭い。どうせググルぐらいなんだから、付けたって罰は当たるまい。ただ、相当なボリュームになるだろうけど)、いろいろな話がてんこ盛りなので、その脈絡を追うだけでも大変だ。
本書は2001年、2002年、2007年そして2008年と4度にわたって繰り広げられた大塚の東いじめが収録されている。全編通じて伝わってくる大塚の東に対する苛立ちが、この本の中身以前にある関心事。東自身は、彼の大塚に対する敬意が大塚の苛立ちの素ではなかったかと分析している。不遜なこと書いてんだったら、一貫して不遜でいるべきだ、ということなのかな。なんとなく理解できる。オイラ的には、読んでいて、東世代の持っている諦め観のようなものをなんとなく感じた。書き手としての影響力を疑ってかかる感覚といい、どこか厭世的というか社会と距離を保っているというか第三者的というか責任を回避している臭いを感じるのだ(じゃ、なぜお前は書いているんだ、と大塚に責められる)。
さて、中身の方は断片的に読み取るだけで、全体を通して議論される現代における公共性の意味については、十分理解できてはいないのだけれど、個人は他者とコミュニケーションし、その結果として公共性が生まれてくるという大塚の考え方には共感できる。蛸壺化していく日本社会を全体としてバインドする力が「国」にはもうなくなってしまっていて、「マスメディア」にもそれがないことがばれてしまい、かつての日本における常識(社会通念)的なものも崩壊しつつある状況下、それでもこの社会を文明社会として維持していくには公という概念は必須なわけで、人の他者(あるいはモノコト)とのかかわりの中で生まれる「公」の積み重ねでしか、現代の公共性は維持しえないのだろう。
この時代から生み出された文化的生成物に対するこの手の評論は、すなわち時代の一評価であり、世の中が一体どうなっているかを紐解く鍵でもある。80年代では広告と文化批評の相性はすごくよかったわけで、マーケティングとの結びつきも結構強かったので、この手の話を積極的に追いかけることにも意味があった。ところが、『広告批評』がその役割を終えたとして休刊し、送り手側も効果効率至上主義に傾倒し科学的志向を強化していったために、広告の大衆文化を担う側面は一気に退行してしまったのだ。いや、広告だけでない。いまや評論されるべき対象もないような時代に突入してきているようにも思う。ゲームもアニメも文芸もすべてがデータベース化され、本当の意味でのオリジナルが消失してしまっているようにも見える。また、多様化しすぎてメインストリームはもはや存在しなくなっている。では、どこから時代を読み解けばいいのか。少なくとも、この手のものは今でも手がかりにはなるのだ。
ところで、東は『動物化するポストモダン』で、無理して大人になることなく、ぬるぬる生きるべきではないかといっているが、それでもやっぱり、人は蛸壺の中で一生を過ごすことはできない。どこかで出てきて何かと向き合わなければならない。この辺のスタンスの違いが、大塚の苛立ちの根っこなのかもしれないと思った。

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