貧困大国ニッポン
人それぞれいろいろな事情を抱えながら、ネットカフェ難民(確かに“難民”はネーミングとしてどうかと思うが)のような境遇に落ち込んでいってしまうのは分かる。おそらく、自分ではその先何が待っているのか分からなかったんだろう。分かっていれば何か手を打ったはずだから。で、そのような蟻地獄的環境に陥ってしまえば、自分自身の努力で抜け出そうにも抜け出せないというのも分からないではない(大半が定住地を持ちたくても入居のためのイニシャルコストが負担できないことが原因だという。“住所不定”では正規の就職は難しい)。自ら進んでその生活を甘受しているのは放っておけばいい話で、問題なのは抜け出したいけれどもどうしようもない人たちだ。彼らに対しては、なんらか救済の仕組みが必要とされる。特に就職期に一度ドロップアウトした連中に対してリカバリーの機会を与えないといけない。
昭和的年功序列社会が崩壊し、能力至上主義になったと言われて久しいが、それでも会社に正社員で入りさえすれば、まだ企業が社会の荒波に対する防波堤になって社員の身の安全を守ってくれている。コンプライアンスが叫ばれる昨今においては、2007年問題とあいまって、非正規社員の正社員化の動きも高まってきている。就職氷河期であぶれた若い連中にも、多少明るさが見えてきたのではないかと思う。
ただ、派遣社員やバイトから正社員というルートを取るにも、やはり雇用主を納得させられるだけの能力をその本人が持っているかどうかが重要だから、そう簡単なことでもない。実際使えない奴も多い。大したキャリアは積んでいないのは分かっているので、その人間のポテンシャルや基礎的な能力を見るわけだが、採用される人がいる一方で、なぜ派遣に甘んじているかがわかる人も多い。教えても駄目な奴はやっぱり駄目だ。こういったのは、やはり階層の下に潜るしかないのだろう。それはもう仕方がない。それを救えるほど企業もゆとりがあるわけじゃない。
巻末にどうすれば日本の労働者環境を改善できるか幾つかの提言があるが、どれもピンと来ない。同一価値労働同一賃金の確立を謳っているが、複雑化する労働力を同じ軸で統一することは現実的に不可能だ。確かに同じ社内で同じ仕事をしているのに、社員か非正規社員かによって報酬が異なるのはおかしい話なので、そういった部分は改善していかなければならないにしても、「仕事」に対する「値付け」は基本的に人を雇う側の問題である以上、今はその需給バランスがそこで保たれているということでもある。労働力搾取といわれるほど現場の環境は悪化しているのだろうが、一方でそこまでシビアにならなければ企業の方も潰れる危険性を孕んでいるということだ。
弱者にしわ寄せが行くのは今に始まったことではない。年金や高齢者医療制度にしても何にしてもそうだ。国はもはや国民すべてを守ってはくれない。我々はそういう歪みが出始めた社会に生きていることを認識すべきだし、その上でどう生活防衛していくかを考えていかなければならない。先日も「社会に適応できなかったのは先生のせいだ」といって教師を刺した馬鹿者がいたが、この時代、自分の責任で自分の人生を作るという覚悟をしっかり持たないといけないということなのだ。



Comments