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May 22, 2008

4-2-3-1

4231 4-2-3-1 サッカーを戦術から理解する/杉山茂樹

光文社新書 ISBN978-4-334-03446-7

サッカーは布陣でするものか否か。この問いに対して、杉山さんはこれまでのサッカー観戦人生の総てを賭けて答えようとしている。一般の人から見れば単なる数字が並んでいるだけのシステム表記にあらんかぎりの愛情を注ぎながら。ピッチでプレーし、ゲームを創り出すのは確かに選手だ。しかし、グリーンのキャンバス全体に素晴しい絵を描くための基本的なデザインは監督によるものであり、布陣=システムはどんな系統の絵を描こうとしているのかという意思あるいは思想性を端的に表わすものだと言える。

90年代後半から現在に至るまで、主に欧州やW杯の名勝負を題材に、そのときピッチで何が起っていたのかをシステム図上で解説しながら、サッカーにおける戦略の重要性 と戦術的なポイントを明らかにしていく。なぜトルシエがベスト16でヒディングはベスト4だったのか。なぜジーコはあやまちを犯してしまったのか。いわゆるスターシステムが現代サッカーにはもはや足かせでしかないことを世界のロナウジーニョやジダンを引き合いに出して暴き出す。

本書を読んでいると否が応でも自分自身が監督になってしまう。06年W杯のジーコジャパン。黄金の中盤と呼ばれた中田、中村、小野、稲本を併用した4-2-2-2システムが、いかに適材適所を無視した無謀な策だったか。そして、自分なら当時のメンバーをどう並べ、オーストラリア、クロアチア、ブラジルにそれぞれ対抗していくか、シミュレーションせずにはいられなくなる。そう、この本はサッカーシステム解説書でもあるとともに、世界の名将・迷将列伝でもあるのだ。著名な監督達がどのようなサッカーを志向し、具体的にピッチで何を描いてきたかを検証する旅でもある。それだけ監督業とシステムは切り離せない関係にある。

システム(戦略・戦術)はチームを構成する選手のクオリティに劣る時にこそ真価を発揮する。それはすなわち個の能力を組織で補完するということだ。ジャイアントキリングは偶然の産物ではない。戦力に劣る弱者が強者の弱点を抉り出し、組織で突き崩す戦略と戦術を練り上げた結果の必然なのだ。しかし一方で、システムは万能ではない。チームとゲームは生き物だ。3-4-1-2は4-2-3-1とサイドの攻防において噛み合わせが悪いのだが、現実3-4-1-2を採用している浦和は現時点でリーグの首位に立っている。システムで優位に立つということはない。3バックだって攻撃的なサッカーは可能だ(ただ、実際には守備主導のゲーム運びになりがちではある)。肝心なのは、どんなに優秀な選手でも、その能力に見合った最適の働き場所と役割を与えなければ活きてこないということだ。どんな選手がいて、どんなサッカーがしたいのか。それによってシステムは変わってくる。さらには、相手チームの布陣やゲーム中での状況に応じても変わっていく。選手交代における監督の意図をそこから読み取るのもゲーム観戦の楽しみの一つだが、システムを理解しているか否かでその楽しみ(深味)も全然違ってくる。

同じお金を払って観るのなら、いろいろ楽しめた方が得だと思う。サッカーの読み物としてだけでなく、観戦指南書としての価値も高い。そんな意味で、本書はサッカーを深く理解し楽しむためには避けては通れない一冊である。

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