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July 16, 2007

あの戦争は何だったのか

Im000018 あの戦争は何だったのか 大人のための歴史教科書

保阪 正康

新潮新書 ISBN978-4-10-610125-0

あと1ヶ月もすると62回目の終戦記念日が来る。

終戦記念日といわれると8月15日に戦争が終わったと思われがちだが、その日は玉音放送が流れた日であり、史実的に言えば9月2日のミズーリ艦上で行われた降伏調印式をもって終戦とするのが正しい、と著者が指摘している。こんなことすら忘れてしまっている自分を例に取るまでもなく、後世に残されているあの戦争の記憶はだんだん曖昧なものになってきている。学校で近代日本史を学ぶ機会も減ってきているという。いや、そもそも「敗戦」を「終戦」と言い直させたかった指導者が牽引した戦争だ。すべてにおいて記憶は歪んでいるのかもしれない。

生き残った方々の話も個別の体験談であり、戦争全体を代表するものでもない。太平洋戦争そのものを体系的に俯瞰的に理解する必要がある。なぜあの戦争は始まり、310万人もの犠牲者を出して終わったのか。アメリカの庇護の下で成長を遂げて来た日本は今まさに新しい局面を迎えようとしている。改めておさらいする事は、今日の複雑な国際情勢を考える上で非常にためになると思うからだ。

本書は、2.26事件あたりからの戦争に向けての動きから紐解いている。当時の国際情勢や国内不況にあえぐ国民の不満や不安がよく読み取れる。アメリカを敵に回すのはまずいと思っていたにもかかわらず、何とかなるだろうぐらいの政治的・軍事的見込みで始めてしまったの事実が、この戦争の本質すべてを象徴している。海軍の最終的な決断で開戦し、ドイツの尻馬に乗って勢いだけで始めた戦争。アメリカといえど、欧州戦線でドイツヘの対応が忙しくなり、1年かそこらで停戦しようと向こうから言って来るだろうぐらいの軽い気持ちで始めたようにしか見えない。始めた時に戦争の終わらせ方は考えられていたが、すべて日本の都合の良いシナリオだけが書かれており、およそ現実的なものではなかったという。

自分は死ぬつもりもないくせに玉砕を強要し、本土決戦を最後まで主張する指導者達。戦略は最初からなく、兵站の概念もなく、物量に対して精神力があれば対抗できると妄信した指導者達。そして、彼らを自由にさせてしまった政治システムとそれを支持した国民。読み進めるごとに、誰にも止められなかったのだなと思うし、某政治家が「やむをえなかった発言」(公人が公の場で発言していい内容ではなかったですが)で辞職に追い込まれたが、この私見はある意味正しくて、広島、長崎の犠牲がなければ最悪の事態に追い込まれていったに違いないと思う。特攻隊の人たちもそうだし、沖縄戦の犠牲者もそうだし、多くの犠牲の上に今の日本の社会が成り立っている事を改めて認識するにつけ、そういった方々への感謝の念が自然と湧き上がってくる。某首相がこだわる愛国心とやらも、教育基本法に書けばいいということではなく、こういったところから育てていくべきではないのだろうか。

本書の終盤で著者は、敗戦国家がわずか10年程度で飛躍的な復興を遂げる、この集中力こそ日本の民族特性なのではないかと指摘している。目標を決めると達成するまで猪突猛進する性質は、ベクトルが正しい時は素晴らしい成果を生み出すが、一旦道を踏み外してしまうと修正がきかない。冷静に時々に自らを振り返ることが出来なくなる。抑止力、牽制力が利かなくなった日本はちょっと恐ろしい。その特性は、どうも今日においても受け継がれているように思えてならない。

日本が主体的に動かなければならなくなったとき、その道しるべをどこに求めるのか。間違った選択をした時にすぐさま面子を捨てでも正しい道に修正できるのか。内政も大事だけど、海外依存度があまりに高くなってしまっている現代日本にとって、国際政治力こそ今後一層求められる能力だと思うのだ。その力を持った人が指導者になっているのか、よく考えないといけない。

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