« 茂庭の居場所 | Main | つかの間の休息 »

February 17, 2007

評伝シャア・アズナブル 《赤い彗星》の軌跡

Im000016

Im000017

評伝シャア・アズナブル 《赤い彗星》の軌跡 上・下巻/皆川 ゆか 講談社刊
ISBN4-06-364676-9/4-06-364675-0

忘れ物を取り戻したような感覚。

ガンダムの世界観は、四半世紀を経過した今になっても拡張し続けている。

バ、バケモノか、である。

記述においては、フィルムの情報を最優先するという「機動戦士ガンダム公式百科事典」の方針を引き継いだのだそうだ。つまりこの本は、作品上の情報から背景や登場人物の心情を読み取り解説することを目的としている。なんとも奇特な作品である。著者は、その百科事典を編著した人でもある。上巻は1年戦争まで、下巻はグリプス戦役から第2次ネオ・ジオン抗争までを扱っている。
さて、科白や画面から得られる情報から背景を読み取るにしても、ファーストガンダムはそれほど深読みできる内容でもないので、余程の初心者でなければ上巻は飛ばしてもいい。上巻は、現在並行して「機動戦士ガンダム・THE ORIGIN」が角川のほうで走っているためかぶる部分が多く、内容がいかにも苦しい。この本の監修がサンライズとはいえ、THE ORIGINの作者は安彦良和である。どちらが真説かは言わずもがなである。“評伝”が“真説”を凌駕することはありえない。(それにしても、エドワウ・マスがいかにしてシャア・アズナブルになったのかは鳥肌ものである)
実際、ガンダムシリーズには伏せられた部分が多くあり、伏せられたまま登場人物の科白や行動となって表に現れてくるので、このような企画が成立するのはよく分かる。そして、この本の真価はグリプス戦役以降、すなわちΖガンダムシリーズに入ってから発揮される。
Ζシリーズにおいて、入り組んだ人間関係と組織の利害関係を紐解くにはフィルムからの情報がいかにも少なすぎて、ストーリーを理解していくのが意外とやっかいだが、この本はそれを上手く解説してくれている。特に、これを読むと女性の登場人物たちの心理の動きがよくわかる。フィルムからそのすべてを一度で読み取ることは不可能に近い(少なくともオイラは無理だった)。だから、その方面が鈍な人間にとっては、これはほんとに助かる。これを読んで再度本編を見直すことをお薦めする(オイラにはそんな時間はないが、実際Ζ(映画は意味なし)と逆襲のシャアは見直したいと思ったもの)。

帯のタタキにこうある。「この男の人生、他人事(フィクション)じゃない」。そう、実在するのではないかと思えるほどのリアリティを、シャア・アズナブルというキャラクターには感じるのだ。そして、彼に対する共感の本質が一体何だったのかはこの本に書いてある。確かに書いてある。それは、なぜシャアが素顔を隠し続けたかということでもある。

なんにしても、ガンダムシリーズとはシャア・アズナブルという不世出のキャラクターの激動の半生を描いた大河ドラマであり、彼の生き方にこそ、この物語が今なお語り継がれている理由が隠されているのだ。

|

« 茂庭の居場所 | Main | つかの間の休息 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/77466/13936019

Listed below are links to weblogs that reference 評伝シャア・アズナブル 《赤い彗星》の軌跡:

« 茂庭の居場所 | Main | つかの間の休息 »