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July 07, 2006

ヒストリー・オブ・バイオレンス

突然何か忘れているような気がして、埋もれかけの記憶を強引に引きずり出して奇跡的に観ることができた。クローネンバーグというキーワードだけがモチベーションだったが、その直感は正しかった。(以下ネタばれあり)

ラストシーンには胸がつまってしまった。久々にジワッときた。

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夕餉に帰ってきたパパにお皿を差し出す娘、パンを勧める息子、妻は顔を上げ、夫の顔をジッと見つめる。二人の間に言葉はない。そしてブラックアウト。過剰な演出を排除したシンプルなラストは逆に観る方のイマジネーションを喚起する。彼女の瞳からハッピーエンドを感じ取るのだ。
トム・ストールは、ギャングの殺し屋としての過去を隠しコーヒーショップを営みながら平穏な人生を送っていた。ところがある日、自分の店を襲った強盗を撃退したことで一躍有名人になってしまう。大々的にメディアに取り上げられたことで、彼に恨みを持つギャングに見つかってしまう。平凡な愛するダンナが殺し屋だったことを知り愕然とする妻エディ。いじめられっ子だった息子は父の隠された狂暴性に触発され、いじめっこをボコにする。トムは自らの過去を清算するために“兄”の元へ向う。そしてラストシーンへ。崩壊しそうだった家庭はトム=ジョーイの誠心によって救われるのだった。
スクリーンからただようクローネンバーグ特有のすえた臭い(ビビッドな色彩がほとんど見られない。画質が妙に落ち着いているというか陰影を含んでいることが、作品全体のトーンとして効いているのだろう)。暴力と死体のリアリティ。長まわしを多様した間。淡々と描き込まれるストーリー。そして、家族愛という不変のテーマ。上手くいえないのだが、クローネンバーグの作り上げる世界観は、主観的でいてどこか冷めている。そのクールさが、登場人物や語ろうとするテーマを際立たせている。ロードショーもの、大作にありがちな嫌味な押し付けは全くない。鑑賞後に少さな幸せを運んでくれる佳作であった。

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