« 初詣 | Main | 脂肪燃焼 »

January 06, 2006

ロード・オブ・ウォー

最初、戦争の道(road)?と思っていたら戦争王(load)だったのね。という勘違いは別にして、世界の裏側を見つめた本作は、是非GSDの作家陣に観て頂きたいものである(爆)。(以下ネタバレあり)

low 時は米ソ冷戦時代、ウクライナ移民であるユーリーは自身の成功を目指し、父親のユダヤルートから武器商人の道へと入っていく。私の支援で世界は動いていると嘯く有力武器商人にコケにされながらも、彼は商才を発揮してのし上がっていく。そんな折、冷戦終結は彼に思わぬチャンスを与えた。祖国ウクライナに乗り込み、親戚の軍属を抱きこみ、大量の武器をアフリカに横流し始めたのだ。昔からの憧れのモデルと結婚し、子供ももうけ、全てが順調の毎日だったが、一方でユーリーは武器密輸の嫌疑でFBIからマークされていた。捜査官はユーリーの妻に揺さぶりをかけ、彼女はユーリーの秘密を知ってしまう。一度は彼女の願いを聞き入れて武器商人から身を引いたが、旧知の西アフリカの大統領からの頼みを断りきれずに、弟を伴い再び紛争地へと赴く。商談の最中、弟は武器売買の罪悪感に耐え切れなくなって持ち込んだ銃を燃やしてしまうが、彼も商談相手に殺されてしまう。妻と子供は家を出、両親からは絶縁され、家族全てを失うユーリー。弟の遺体をアメリカに持ち込む際に犯したミスでFBIに拘束されてしまうが、彼のバックにはアメリカ合衆国政府がついていた。彼は国の都合で釈放され、武器商人として紛争地に戻っていくのだった。

ニコラス・ケイジは冴えないビジネスマンをやらせたらピカ一だね。あのハの字の眉毛がぐにゃぐにゃ曲がって、いろいろな感情を表している様は見ていて面白い。特に、困った系の顔は抜群である。あの手の顔はどこかで見たことがある感じの顔だと思う。日本人でも、あの手の顔をする人はいる。実に親近感が沸くのである。

さて、そんな性格俳優演じるところのユーリーの人生も壮絶極まりない。物を売ることであれば車でもよかったはずだ。しかし、彼は武器をネタとして進んで選んだ。なぜか。儲かるからだし、食いっぱぐれがないからだ。世界中で戦争や紛争がなくならない限り、武器はつくり続けられるし、それを売り買いするマーケットは存在し続ける。武器はクルマ以上に高価だが、消耗品でもある。冷戦終結後はなおさら、使わなければ価値がない。そして、そこにはすでにイデオロギーは存在していなかった。単に支配するかされるかの生存原理に導かれて闘い続ける現代の紛争地域に、すでに人間らしさ、人としての倫理観や道徳観など存在していない。武器は不要なものを排除するための目的においてのみ機能するのだ。

人が殺されるえぐいシーンはいくつかあるが、それ以上に、このアナーキズム(人間性の喪失)こそがこの作品をR-15指定にしている根幹なのではないかと思った。物語の最後でユーリーは独白している。武器をつくり輸出しているのは常任理事国の各国であると。現代の大いなる矛盾。売った武器がどう使われようと、それによって誰が殺されようと無関係だと言い切るユーリー。それは、間接的には黙ってその恩恵にあずかっているアメリカ国民全てにもいえることだし、常任理事国の国民にも言えることだ。日本だって決して無関係ではない。
ユーリーの物語は多分に実話が練りこまれている。ストーリーの展開も、ドキュメンタリータッチで淡々と進んでいく。適度な笑い(不時着輸送機での武器払い下げと機体解体シーンとか)で気分をほぐしながら、西アフリカの娼婦の科白(今日明日死ぬかもしれないのに、10年先にかかる病気なんて気にしない)に考えさせられ、ユーリーの孤独(弟が死んだとき、彼の事を何も理解していなかったという彼の独白)を思う。そして、武器を売って何が悪い、というユーリーの感覚を理解してしまっている自分に恐怖するのだ。

|

« 初詣 | Main | 脂肪燃焼 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/77466/8036249

Listed below are links to weblogs that reference ロード・オブ・ウォー:

» 【劇場鑑賞】ロード・オブ・ウォー ―史上最強の武器商人と呼ばれた男―(LORD OF WAR) [ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!]
今世界には 5億5千万丁の銃がある。 ざっと12人に1丁の計算だ。 私が目指すのは・・・ ”1人1丁の世界” [Read More]

Tracked on January 09, 2006 at 06:52 PM

» ロード・オブ・ウォー [シアフレ.blog]
主人公の“ユーリー・オルロフ”のキャラクターは、実在する5人の武器ディーラーから抽出したキャラクターを融合して構築されているということで、架空の人物ながらリアリズムに満ちています。 また、作品の中で描かれているほとんどの出来事自体には実例があるというのも特... [Read More]

Tracked on January 12, 2006 at 09:43 PM

« 初詣 | Main | 脂肪燃焼 »