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July 06, 2005

バットマン ビギンズ(ややネタバレ)

batman バットマンを最初に見たのは子供の頃にやっていたTVシリーズで、いわゆるアメリカンヒーローものだった。バットマンカーは格好良かったが、ロビンはいけていないと子供ながらに思ったものだ。そして、映画化。ティム・バートンはダークヒーローとして打ち出し一定の評価を得たようだが(正直アメコミはあまり好きではない)、シリーズが続くにつれてコミック色が強くなり、大人の鑑賞に堪えるものからかけ離れていった。エンターテインメントが悪いとは言わない。シュワルツェネッガーの“ミスターフリーズ”なんてある意味すごいと思う。でも、進んでみようとは思わないのも確かだ。

さて、これら一連のシリーズと一線を画す形?でバットマン誕生が描かれる事になった。監督はあの「メメント」「インソムニア」のクリストファー・ノーラン。主人公ブルース・ウェインに「マシニスト」のクリスチアン・ベール。いずれも曲者である(観ようと思った動機もこの辺にある)。共演者も華々しい。オスカー男優のマイケル・ケイン、モーガン・フリーマンが脇を固め、敵役には「シンドラーのリスト」リーアム・ニーソンが、悪役がはまり役だったゲイリー・オールドマンが良識ある巡査部長役というのもひねりが利いている(渡辺謙はかわいそうだったなぁ。本当ならデュカード役をやりたかったのだろうが…)。

主人公ブルースがなぜ蝙蝠を選んだか、その理由が映画の前半を通じて丁寧に描かれていた。悪と正義の境目はどこにあるのかという微妙な主題を扱っていて、単なる勧善懲悪のヒーローモノに終わっていないところが秀逸である。復讐と正義の狭間に揺れるブルース。「殺しはしない、が、救いもしない」というデュカードに対する台詞にアンチ・ヒーローの香りがする。腐敗した文明を正すという“影の同盟”の目的は、アプローチの方法は間違っていても本当は正しい考えかもしれない。その視点で見れば、ブルース自身が悪党に恐怖を与える存在になることも、ある意味同質ではないのか。何をもって悪とするか、正義とするかは相対的なものであって、その行為をどう解釈するかの違いでしかない。一番大切なのは、その力を誰のために使うのかが問題なのだ。

この物語の見所は、私的な欲望を乗り越え、父の遺産であるウェインの名と意思を継ぐにいたるブルースの心の変遷にある。クリスチアン・ベールはブルースの内面を上手に表現していたと思う。マシニストで見せたあのガリガリのボディはいつの間にか筋肉の鎧に包まれていて、役の上とはいえマシニストに出ていた彼とは同一人物には見えなかった(「マシニスト」が相当すごかったというわけか)。トム・クルーズとキアヌ・リーヴスを足して2で割ったような、ちょっと俗っぽい印象もあるのだが、2人に比べれば適度に陰影が付いていてブルースのナイーヴなイメージにも合っているのかもしれない(地味って事?)。

それにしても、バットマンはかっこよかった。ビルの上にたたずむシーンなんかはグッと来るものがある。アクションもスパイダーマンのブランコ運動と違って、垂直方向の人の意表をつく動きなので、ドキドキ感がある。忍者映画みたいな要素が日本人にもマッチするのかな。逆さ吊りで現れて“I’m here”(だったかそんな感じ)といわれた日にゃ、キタキターってなもんですよ。映画のパーツパーツの出来については物足りないところもある。たとえばバットマンカーのカーチェイスシーンとか、画像のリズム感がちょっとギクシャクしたりとか、もうちょっとやりようがあったのかなと。でも、役者の演技は丹念に追っていたし(やっぱりケイティだけなんか浮いてたなぁ)、バットマンの世界、ゴッサム・シティーの空気感は最後までリアリティを持って表現できていたと思う。バットケイブやバットサイン、そして悪党狩り(ジョーカー)へ繋がっていく設定もしっかり作っていて思わずニヤリとさせられる。1989年の1作目を見たくなってしまう終わり方だったな。その意味で、これはあくまでシリーズとして位置づけられる作品なわけだ。

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